改訂新版 世界大百科事典 「硫酸ニッケル」の意味・わかりやすい解説
硫酸ニッケル (りゅうさんニッケル)
nickel sulfate
化学式NiSO4。酸化数Ⅱのニッケルの硫酸塩のみが知られ,無水和物および1,2,4,6,7水和物が得られている。無水和物は水和物を強熱すると得られる。緑黄色結晶。立方晶系。比重3.68。吸湿性で,湿った空気中では6水和物になる。加熱すると848℃で三酸化硫黄SO3を出して分解する。水に対する溶解度27.2g/100g(0℃)。6水和物にはα,βの2変態がある。硫酸ニッケル(Ⅱ)水溶液を31.5~53.3℃で蒸発するとα形が得られ,53.3℃以上でβ形が得られる。α形は青緑色結晶,正方晶系。比重2.031(15℃)。β形は透明な緑色結晶,単斜晶系。40℃で安定,室温では青色不透明になる。乾燥した空気中では風解する。水に対する溶解度131g/100g(50℃)。7水和物は天然にモレノサイトmorenosite(碧礬(へきばん))として産する。Ni,NiO,Ni(OH)2あるいはNiCO3を希硫酸に溶かし,溶液を室温で蒸発しても得られる。緑色結晶,斜方晶系。比重1.948(15℃)。風解性。加熱すると100℃で4分子,103.3℃で6分子,279.4℃で全部の水を失う。水に対する溶解度117.8g/100g(30℃)。硫酸ニッケルはK,Rb,Cs,NH4,Tl(Ⅰ)の硫酸塩とタットン塩型の複塩をつくる。ニッケルめっき,媒染剤,顔料の製造などに用いられる。
執筆者:近藤 幸夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報