改訂新版 世界大百科事典 「バライプスタカ」の意味・わかりやすい解説
バライ・プスタカ
Balai Pustaka
オランダ植民地政府がインドネシアで設立した文化事業局。この構想は1908年9月に〈原住民学校および人民の図書普及委員会〉の設立として具体化したのち,17年9月,バタビア(現,ジャカルタ)でのバライ・プスタカ(民衆文化局)の開設によって本格化した。原住民社会の文化的向上を目標に,欧米の書籍の収集と西欧文学作品のマレー語(インドネシア語)への翻訳のほか,インドネシア各地の民話,年代記等の収集と出版を行った。しかし,官製の文化活動に不満を抱く文化人は,しだいにこの活動に背を向け,《プジャンガ・バル》誌に示されるような独自の民族的文化運動を構築するようになった。このため,バライ・プスタカは,植民地時代末期以降今日に至るまで,単なる出版会社としての機能を果たすにとどまっている。
執筆者:土屋 健治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報