マレー語(読み)まれーご

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マレー語」の意味・わかりやすい解説

マレー語
まれーご

マレー半島およびインドネシア地域で話されるオーストロネシア系言語マレーシア(1500万人)、シンガポール(300万人)、ブルネイ(25万人)のものを「マレーシア語」、インドネシアの国語を「インドネシア語」(Bahasa Indonesia、1億6000万人)とよぶ。人口に対する、マレーシア語を母語とする者の割合は、ブルネイ80%、マレーシア45%、シンガポール15%、インドネシア7%であるが、ジャワ語(6000万人)、スンダ語(2000万人)など、大小300ほどもあるといわれるこの地域の諸言語の話者の間で数世紀にわたって共通語となってきたのがマレー語である。南インド系の文字による最古碑文(683)がスマトラ島で発見されている。16世紀以来の「古典マレー語」の諸文献アラビア文字で書かれ、20世紀なかばまでの書きことばの標準となった。オランダイギリスによる支配地域が19世紀に確定し、地域によってオランダ式、イギリス式のローマ字化が行われてきたが、1972年から、共通のつづりが用いられることとなった。次に文字で音素を示す。子音はp,b,t,d,c[tf],j[dʒ],k[k,ʔ],g,s,h,l,r,m,n,ny[ɲ],ng[ŋ]、ほかに外来音としてf,v,z,sy[ʃ],kh[x]、半母音はy,w、母音はi,e[e,ə],a,o,uである。語にはmata「目」のような開音節語、rumput「草」のような閉音節語がある。接頭辞接尾辞による語の派生が盛んに行われる。(例:kejar「追いかける」→berkejar(-kejar)an「追いかけ合う」)。接中辞は化石化したものが残るにすぎない。名詞動詞は、性、数、人称、時制などを形で示さない。語の配列は主語+動詞+目的語である(例:Harimau makan babi.「虎(とら)―食べる―豚」すなわち「虎が豚を食べた」あるいは「虎は豚を食べる」)。助数詞は古典マレー語には多かったが現在は三つである。

杉田 洋]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マレー語」の意味・わかりやすい解説

マレー語
マレーご
Malay language

マレーシア,シンガポール,インドネシアで使われる言語。マライ語ともいう。母語とするのは,マレー半島,リアウ諸島など付近の島々,スマトラ東部,ボルネオ沿岸部などに住む約 1100万人の人々であるが,上記の3国の公用語として,より広く流通している。オーストロネシア語族の一つ,インドネシア語派に属し,接辞による語形成の組織が発達している。多くの方言に分かれるが,マレー半島南部の方言が標準語の基礎になっている。最古の文献は7世紀のスマトラの碑文で,南インド系の文字で書かれているが,14世紀以後アラビア文字が使用され,現在はローマ字が用いられる。マレー語のローマ字による正字法は,イギリスの学者たちによって案出され,出版にも用いられた。標準インドネシア語の正字法もローマ字を用いるが,その基礎がオランダ人によってつくられたため,マレー語の正字法とは異なっていた。しかし,1972年マレー語とインドネシア語の正字法が統一され,現在の出版物は新しい正字法によっている。

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