日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ビクトリア(Tomás Luis de Victoria)
びくとりあ
Tomás Luis de Victoria
(1548ころ―1611)
スペインの作曲家。アビラに生まれ、生地の大聖堂で学んだあと、ローマに留学し、同地の教会やセミナリオなどで活躍(イタリア名Tommaso Luigi da Victoria)したが、1585年ころにはスペインへ戻り、マドリード近郊の修道院で、皇帝マクシミリアン2世の皇后だった太后マリアとその娘マルガリータに仕え、マドリードで生涯を閉じた。ビクトリアは、生涯を通じて宗教曲のみを書いた、当時としては珍しい作曲家で、スペイン・ルネサンス音楽の大家の1人である。ミサ曲、モテット、イムヌス、マニフィカートなど、残された多数の作品には、伝統的なフランドルの通模倣様式を基礎としながらも、スペイン特有の情熱にあふれた、劇的なまでの性格がみられる。
[今谷和徳]