日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビクトリアグリーン」の意味・わかりやすい解説
ビクトリアグリーン
びくとりあぐりーん
victoria green
セラミック顔料(がんりょう)の代表的なものの一つ。クロムスズピンク、アンチモン黄、および黒、茶系のスピネル系顔料とともに、陶磁器固有の顔料で、別名「ひわ」ともいう。ドイツのゼーゲルによる重クロム酸カリウム36%、珪石(けいせき)20%、石灰石20%、蛍石12%、塩化カルシウム12%という複雑な配合例がいまも製法の主流となっている。これらの配合物を約1200℃に加熱して得られ、クロムざくろ石Ca3Cr2(SiO4)3(ウバロバイト)からできている。鉛釉(えんゆう)および石灰釉により鮮明な黄緑色の呈色をする。ただし用いる釉の組成には厳しい制限があり、酸化マグネシウム、酸化亜鉛は釉の成分としては使用できない。ジルコン系、酸化スズ系、ジルコニア系の新しいセラミック顔料の出現するまで、緑の部分を青緑の色調のピーコックとともにカバーしてきた。調製の際、六価クロム(CrO42-)が副生するため、その処理が必要であるが、鉛釉、石灰釉による呈色が鮮明なため、現在でもかなりの需要がある。
[大塚 淳]