ファルマン兄弟(読み)ファルマンきょうだい

改訂新版 世界大百科事典 「ファルマン兄弟」の意味・わかりやすい解説

ファルマン兄弟 (ファルマンきょうだい)

フランスの航空技術者。兄はアンリHenri Farman(1874-1958),弟はモーリスMaurice Farman(1877-1964)。とくに兄アンリは航空初期の先駆的飛行家としても有名である。ただし両親はパリ在住のイギリス人であり,アンリ自身も1937年まではイギリス国籍をもっていた。彼は最初芸術家を志し,次いで自動車レーサー,やがて飛行機の操縦にひかれた。機体ボアザン兄弟が製作したボアザン複葉であったが,1908年末にそれに補助翼を加え,ヨーロッパ最初の旋回飛行,次いで最初の1km飛行(500m往復)を行って賞金を得た。彼がみずから製造を始めるきっかけとなったのは,ボアザン兄弟に依頼していた機体が転売されてしまったことで,これに憤慨した彼は,09年独自の設計によるアンリ・ファルマンⅢ型の初飛行に成功した。この機体を改良した1910年型は,徳川好敏大尉が日本最初の飛行(1910)に使った機体である。弟のモーリスはモーリス・ファルマン式と呼ばれる機体を開発し,兄のものと同じ複葉推進式ながら,安定で使いやすかったため,第1次世界大戦初期には多数フランス空軍に採用された。日本陸軍はこの機体を購入生産し,当時の所沢にあった陸軍飛行場で盛んに飛行させたので,日本初期航空の風物詩となった。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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