日本大百科全書(ニッポニカ)「ベリジャー幼生」の解説
ベリジャー幼生
べりじゃーようせい
veliger larva
軟体動物門の腹足綱と二枚貝綱にみられる幼生の一時期で、被面子幼生ともいう。個体発生上トロコフォラ幼生の次の段階で、腹足綱では背側に螺旋(らせん)形の殻が、二枚貝綱では左右両側に2枚の殻が生じてくる。また、ベリジャー幼生になると、トロコフォラ時代の繊毛帯のあった部分が広がって、頭部の両わきに面盤(ベーラム)とよばれる器官が形成される。あたかも翼のように広がっている面盤の周囲に生えている繊毛は、泳ぐことのみならず、微細な餌(えさ)を集めて口に運ぶのにも用いられる。ベリジャー幼生の期間は種によって長短があるが、底生生活をする時期(沈着期)に近づくと、匍匐(ほふく)用の足が発達してきてペディベリジャーとなる。沈着後は面盤を失い、後生殻が発達を始めて、ベリジャー期を脱する。
[奥谷喬司]