幼虫移行症による肝好酸球性肉芽腫症

内科学 第10版 の解説

幼虫移行症による肝好酸球性肉芽腫症(寄生虫による肝疾患)

定義・概念・病因・疫学
 幼虫移行症(larva migrans)はヒトで成虫になれない寄生虫の幼虫が体内を移動して起こる疾患で,肝臓や肺の深部臓器に感染すると内臓幼虫移行症(visceral larva migrans)となる.国内の感染では野生動物や家畜の筋肉や肝臓を生食,あるいは不十分な加熱処理で食べることで感染する.肝に好酸球性肉芽腫(eosinophilic granuloma)を形成するのはブタ回虫やイヌ回虫が多いと考えられる.経口摂取により体内に入った幼虫は腸管から門脈を経て肝,次に肺へと移行し,虫体周囲に好酸球性肉芽腫が形成される.したがって,典型的な臨床像は,末梢血の好酸球増加を伴う肝や肺の多発性小結節病変である.最近の画像診断の進歩によって診断される症例が増加している.
臨床症状・診断
 感染する幼虫の多寡によって急性期の症状は異なるものと考えられる.感染個体数が多い場合には,発熱軽度から中等度の肝機能障害と肝に多発する結節性病変で気づかれる.超音波検査では低エコー結節で,中心部に小さな囊胞病変(ビーズサイン)が認められる(図9-14-3A).感染時期によって血流が変化すると考えられ,感染初期には肝悪性腫瘍を疑われて切除される症例もある.また,炎症が収まった状態で診断されると,血流のない小結節で組織診断では壊死組織(図9-14-3B)とCharcot-Leyden結晶の存在(図9-14-3C)が診断に有用とされる(中島ら,1997).本疾患を疑った場合には,ブタ回虫,イヌ回虫,ネコ回虫の血清抗体検査で診断する.
治療
 幼虫移行症による好酸球性肉芽腫症にはアルベンダゾール10~15 mg/kg,分3,14~28日,経口投与.しかし,臨床的には自然治癒例も多い.[田中正俊]
■文献
前田健一,下松谷匠,他:肝吸虫症に合併した胆管癌の1例.日臨外会誌,70: 1481-1485, 2009.
中島 収,渡辺次郎,他:肝の凝固壊死を呈する肉芽性結節に関する臨床病理学的研究.肝臓,35: 527-535, 1997.
佐藤 公,他:日本住血吸虫症合併肝細胞癌におけるHCV抗体の検討.Clinical Parasitology, 2: 71-72, 1991.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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