知恵蔵の解説
ペニーオークションは英国の補助通貨単位ペニーが由来とされており、ごく少額の印象を与える。従来のネットオークションとの違いは幾つかあるが、まずは、出品物は主催者側が用意するのが大前提であるということが挙げられる。オークションへの入札はコインやペニーと呼ばれる通貨単位が採用される。コインは購入量によって変化するが、1コイン5円から80円ほどの幅がある。また、開始金額は低く抑えられており、0円開始のものも存在するのも大きな特徴。入札ごとに上昇する入札単位は1円、5円など少ない金額に抑えられている。落札金額も比較的低くなることが多いが、オークション参加者は入札回数に比例したコインを支払うため、見かけほど安価に落札できるわけではない。
主催者側の立場からは、落札金額の上昇もさることながら、入札手数料での収入が得られる入札機会が増えることが望ましい。開始価格を低く設定し、入札単位を小さく抑えているのはこのためだ。入札側には低い価格が魅力的に見えるため、入札を行いやすい。このとき、終了時刻直前に入札すると自動的に延長されるため、他に注目している入札者にもチャンスを広げ、消費するコインの量を増やす結果となる。
例えば、定価2万円のものが1500円で落札されたオークションでも、入札手数料が2万円以上にのぼる場合がある。この場合、主催者側は原価割れで商品を提供したかに見えるが、実は入札者全体から定価以上の収入を得ることができている。落札者は入札手数料と落札金額を負担すれば商品を手に入れることができるが、その他の入札者は手数料だけを支払う。ギャンブル性が高いと言われるゆえんだ。救済策として、落札できなかった入札者に商品を定価で提供するサービスを用意したオークションサイトも存在する。
落札金額をあげたり入札機会を増やしたりするためのサクラやボット(自動入札システム)の存在疑惑、出品商品が未入荷でオークションが取り消しになって手数料だけ徴収される、一度購入したコインは換金できない、などのトラブルが急増しているため、消費生活センターでは消費者に注意を呼びかけている。
(佐橋慶信 ライター / 2011年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報