日本大百科全書(ニッポニカ) 「マジョリカ陶器」の意味・わかりやすい解説
マジョリカ陶器
まじょりかとうき
Majolica 英語
Maiolica イタリア語
イタリアで焼かれた錫釉(すずゆう)色絵陶器。名称の由来は、中世末期にスペインで焼かれた錫釉色絵陶器(イスパノ・モレスク陶器)が、イベリア半島の東部に浮かぶマジョルカ島を経由して運ばれていたためとされている。しかし、それよりはやく、イタリアでも中部のシエナやオルビエート、南部のシチリア島で素朴な錫釉の壺(つぼ)や水差しなどが焼成されており、これらをマイヨリカ・アルカイコとよぶ。スペインから伝えられた錫釉色絵陶器の技法と様式は15世紀になってフィレンツェやファエンツァなどで模倣されたが、やがてルネサンスの開花とともに、ウルビーノやデルタなど各地で窯が築かれ、ジョルジョ・アンドレオーリ、ニッコロ・ペリパリオらの優れた絵付師が輩出した。最盛期は15世紀末から約半世紀で、古典神話や歴史、聖書物語などをモチーフとした「イストリアート」とよばれるものやグロテスクなものなど、マジョリカ独自の様式を発展させた。これらの美しいマジョリカ陶器の影響は16世紀以降、アルプス以北の全ヨーロッパに及んでいるが、17世紀以降は、デルフト、マイセンなどに押されて衰微した。
[前田正明]