日本大百科全書(ニッポニカ) 「シエナ」の意味・わかりやすい解説
シエナ
しえな
Siena
イタリア中部、トスカナ州シエナ県の県都。人口4万8844(2001国勢調査速報値)。カッシア街道沿いの標高322メートルの丘上に位置する古都で、貝の形をした独創的なカンポ広場、現在市庁舎となっているプブリコ宮殿(パラッツォ・プブリコ)、大聖堂などがあり、とりわけ12~14世紀の繁栄ぶりを今日に伝えている。しかし幹線鉄道から離れ、伝統的な折半小作制地帯に位置したため、近代化の過程では大きく遅れをとった。ぶどう酒、小麦粉、菓子などが生産されるが、市の経済を基本的に支えているのは、商業、観光業、大学と、この地を拠点とするシエナ牧畜銀行の活動である。年2回、パリオとよばれる伝統的な競馬が催される。なお、1995年にシエナの歴史地区は世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。
[堺 憲一]
歴史
帝政ローマ時代に発達し、12世紀前半に自由都市となった。以来、大商人、銀行家が輩出し、富を蓄積するが、隣国フィレンツェとの宿命的確執が始まる。13世紀なかばより、大商人の少数独裁体制が倒れた1355年までが最盛期であり、大聖堂、市庁舎などが建設され、シモーネ・マルティーニなどの芸術家が活躍した。しかし以後は政治的に不安定で、1554年スペインの支配下に入り、59年メディチ家に譲渡されてトスカナ大公国に併合された。
[在里寛司]