ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モテト」の意味・わかりやすい解説 モテトmotet 音楽用語。中世,ルネサンスを通じ,初期多声音楽のなかで最も重要な楽曲形式の一つ。ノートル・ダム楽派最盛期に登場し,現代までいろいろ変化している。中世には,クラウズラの上声部ドゥプルムに歌詞をシラビック(1音節1音符)にあてはめ,ことば motをもつ声部としてドゥプルムだけをモテトウス motetusと呼んだが,しだいに楽曲全体をいうようになった。テノール定旋律と多歌詞性が特色であったが,ルネサンス時代になると,多歌詞性は廃止され,全声部同一の宗教的歌詞となり,定旋律中心から,模倣対位法様式へと推移した。この時代はヨハンネス・オケヘム,ジョスカン・デ・プレ,ジョバンニ・ピエルルイジ・ダ・パレストリーナ,オルランドゥス・ラッススらが活躍した。バロック時代以降になると,ア・カペラ様式が排され,器楽伴奏や独唱が用いられて,新しい通奏低音を伴う様式が発達した。クラウディオ・モンテベルディ,J.S.バッハ,フランソア・クープラン,ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト,ヨハネス・ブラームスらに優れた作品がある。モテトの最盛期はルネサンス時代までで,それ以降はそれまでの重要性を失い,今日では散発的にみられるにすぎない。 出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報