改訂新版 世界大百科事典 「モリブデン酸塩鉱物」の意味・わかりやすい解説
モリブデン酸塩鉱物 (モリブデンさんえんこうぶつ)
molybdate mineral
錯陰イオンの(MoO4)2⁻と陽イオンによって構成されている鉱物で,ウルフェナイト,パウエル鉱,リンドグレン鉱などがある。ウルフェナイトwulfenite(モリブデン鉛鉱ともいう)PbMoO4は,正方晶系の黄色ないし赤褐色四角板状結晶で,{011}に明瞭なへき開がある。ほぼ透明で樹脂状ないしダイヤモンド光沢がある。モース硬度2.5~3,比重6.5~7。タングステンがモリブデンを約1/2まで置きかえ,同じ結晶構造の鉛重石PbWO4と部分的に固溶体をつくる。鉛やモリブデンを含む鉱床の酸化帯に産出する。メキシコ,オーストリア,アメリカ,チェコスロバキアなどがおもな産地である。日本では福井県中竜(なかたつ)鉱山,鳥取県倉吉鉱山などに産したことがある。パウエル鉱powellite CaMoO4は正方晶系の黄色ないし緑黄色錐状または薄板状結晶で,モリブデンの一部がタングステンで置きかえられたものも存在する。鉱床の酸化帯に産出する。リンドグレン鉱lindgrenite Cu3(MoO4)2(OH)2は単斜晶系の緑色板状結晶で,主として石英斑岩銅鉱床に産する。
執筆者:青木 義和
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報