化学辞典 第2版 の解説
ラッセル-ソーンダーズ結合
ラツセルソーンダーズケツゴウ
Russell-Saunders coupling
多電子原子において,電子の軌道角運動量li どうしの相互作用,ならびにスピン角運動量 si どうしの相互作用のほうが,si と li の間のスピン軌道相互作用に比べて大きい場合には,全軌道角運動量
全スピン角運動量
のそれぞれの量子数L,Sが,よい量子数となって,原子のエネルギー準位はLとSにより指定される.このような場合をラッセル-ソーンダーズ結合またはLS結合といい,多くの原子,とくに軽い原子ではよい近似で表現される.L,Sで指定されるエネルギー準位は,L = 0,1,2,3,…に対してS,P,D,F,…の記号を用い,その左肩に多重度 2S + 1をつけて 3P のように表される.これらの準位は,さらにスピン-軌道相互作用により,内量子数Jの違いに対応する小さな多重項分裂を起こすが,これをも区別する場合には,Jの値を右下に記して 3P2 のように表す.ラッセル-ソーンダーズ結合の場合には選択則
ΔS = 0,ΔL = ±1
が成り立ち,多重項分裂に関してはランデの間隔法則が適用される.重い原子または高い励起状態については,この結合方式が適合しにくくなる場合が多い.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報