量子力学では物理量が連続的な値をとらずとびとびの値をとることが多い。この場合、物理量の値を整数または半整数(整数に1/2を加えた数)を用いて表すことができる。一般に物理量の値を区別する整数または半整数を量子数という。
力学系の状態はその物理量の値で区別することができるので、量子数は力学系の量子的状態を表すのに用いられる。水素原子内電子の運動は、その動径方向の運動と回転運動とに分けることができる。電子を非相対論的に扱うと、そのエネルギーは、動径方向の運動を表す状態関数の波打つ数と角運動量lとで決まる数nの2乗に反比例した値(-e2/2a0)(1/n2)(a0はボーア半径)をもつ( 参照)。nを主量子数という。また回転運動に伴う角運動量の大きさは
(ħはプランク定数hを2πで割ったもの)で与えられ、その一成分はmħで与えられる。lはl=n-1,n-2,……,0で与えられる正整数で方位量子数、mは-l,-l+1,……,lで与えられる正負の整数で磁気量子数という。電子の軌道運動状態はn、l、mの三つの量子数を同時に与えることによって定まる。核子数や力学系の総荷電量が素電荷の何倍であるかを示す数も量子数という。
[田中 一]
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量子条件のもっとも一般的な表現であるゾンマーフェルトの量子条件式でもわかるように,ある整数があってそれが0,1,2,…と変わることがその量の量子性を示している.このような数を量子数という.もし,その量が系のエネルギーに含まれるときは,エネルギーにもとびとびの値を生じる.通常,エネルギーの値にもっとも効果的に影響する量子数を主量子数という.量子数のなかにはエネルギーには関係せず,ただ状態を区別するだけのものもある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…電子の角運動量はmωr2であるが,ここで,試みに,電子の角運動量がħ(ħはプランクの定数hを2πで割ったもの)の整数倍でなければならないという量子条件を課すると,mωr2=nħとなる。ただし,n=1,2,3,……で,量子数と呼ばれる。上の二つの式から,r=n2ħ2/me2となり,電子の速さはv=ωr=e2/nħとなる。…
※「量子数」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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