日本大百科全書(ニッポニカ) 「三日夜餅」の意味・わかりやすい解説
三日夜餅
みかよのもちい
婚嫁(こんか)の際に行われた儀式の一つ。平安時代、貴族社会において主流を占めたいわゆる婿取り婚の婚儀では、結婚の開始から、毎夜男は女のもとへ通うのであるが、普通三日目の夜に餅(もち)を婿に供することが行われた。本来これは露顕(ところあらわし)の儀と一体のもので、その本質は、自家の女性の寝所に忍んで通う男を、その現場でとらえ、自家の火で調理した餅を食べさせることで同族化してしまうという婿捕(むことら)えの呪術(じゅじゅつ)の儀式化といえる。露顕の際には、婿は舅姑(しゅうとしゅうとめ)以下と対面、披露の宴が催され、新婦側は婿の従人を饗応(きょうおう)した。餅の種類、数などには諸説あるが、『江家(ごうけ)次第』は、銀盤に餅三枚をのせて供し、婿はそれを全部は食い切らないのを作法としている。
[杉本一樹]