日本大百科全書(ニッポニカ) 「三輪山ノ神遺跡」の意味・わかりやすい解説
三輪山ノ神遺跡
みわやまのかみいせき
奈良県桜井市三輪町馬場山ノ神にある古墳時代の祭祀(さいし)遺跡。古来より神のこもる山と仰がれた三輪山の西麓(せいろく)にあり、三輪山祭祀遺跡群の一つで、磐座(いわくら)を伴う。1918年(大正7)地元農民の開墾に際し偶然に発見された。磐座は長さ1.8メートル、幅1.3メートルの巨石(安山岩)を中心に数個の石よりなり、素文銅鏡、硬玉製勾玉(まがたま)、滑石製勾玉、臼玉(うすだま)、管玉(くだたま)、双孔円板(そうこうえんばん)、子持(こもち)勾玉、さらに土製の臼(うす)、杵(きね)、匏(ひさご)、柄杓(ひしゃく)、匙(さじ)、箕(み)、案(あん)(物をのせる台)などの模造品が出土した。磐座はもちろんのこと、多種かつ多量の遺物は学界に注目され、とくに土製模造品は『延喜式(えんぎしき)』との比較から古代酒造用仮器と考えられている。発見当初、奈良県により調査され、一時古墳と間違えられたこともあった。遺物のうちおもなものは今日大神(おおみわ)神社と東京国立博物館に収蔵されている。
[佐々木幹雄]
『大神神社史料編集委員会編『大神神社史』(1975・吉川弘文館)』