勾玉(読み)マガタマ

デジタル大辞泉 「勾玉」の意味・読み・例文・類語

まがたま【勾玉】[書名]

笠原淳長編小説。平成元年(1989)刊。

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改訂新版 世界大百科事典 「勾玉」の意味・わかりやすい解説

勾玉/曲玉 (まがたま)

湾曲した体の一端に近く緒をとおす孔をうがった玉。湾曲した形を〈まがたま〉と名づけたのであろう。《日本書紀》は勾玉と記し,《古事記》は曲玉の字を用いる。はじめ曲玉の字をあてたが,曲には曲直などの熟語にみるように悪い意味もあるので,勾玉に改めたという説が有力である。便宜上,孔のある部分を頭,他の端を尾とし,それにしたがって,湾曲した体の内側を腹,外側を背と呼ぶ。ひいては,頭端に3~4条の線を刻んだものを〈丁字頭(ちようじがしら)勾玉〉という。これはチョウジ花柄の形に似ていると考えての命名である。また〈コの字形勾玉〉というのは,体がコの字形に角ばった古墳時代後期の勾玉をさす。

 勾玉は日本で独自に発達したの形である。縄文時代から使用しているので,動物歯牙の基部に孔をあけて用いたのが原形であろうという説がある。ただし縄文時代の石製勾玉には,材料の形から制約をうけた不規則な形のものが多いとともに,晩期縄文土器の手法を模した瘤状突起を付加したものもある。これらの不規則な形のものを含めて,〈石器時代勾玉〉と総称することによって,弥生時代以降の整美な形の勾玉と区別する用語法もある。しかし,形の関連のほかに,硬玉(ヒスイ)を材料とすることを好む点でも,石器時代勾玉が弥生時代以降の勾玉の母胎になったことはたしかである。弥生時代には古墳時代と同じC字形の湾曲を示す勾玉が成立し,丁字頭もはじまっている。また体の腹側に突出部があって,山字形を呈する〈櫛形くしがた)勾玉〉も出現している。材料はほとんど硬玉を用いたが,福岡県須玖(すく)遺跡出土のガラス勾玉のように,鉛ガラスで作ったものもまれにある。

 古墳時代の勾玉は,弥生時代につづくC字形の硬玉製品で,両面から穿孔したものが4世紀にまず普及し,ついで硬玉,碧玉水晶琥珀滑石などを用いて,片面から穿孔した勾玉が4世紀末から出現した。なかでも入手の容易な碧玉の採用は勾玉の大型化に役だち,滑石のような卑質の石材の使用は勾玉の量産を助けた。さらに6世紀後半には,瑪瑙(めのう)で作って片面から穿孔したコの字形勾玉が流行した。なお5世紀前半のガラス勾玉には尾部の細長くなった変形品があるが,4世紀後葉の硬玉製品にも,尾端が頭部に密着して環状を呈するものや,2個の勾玉形を背合せに組み合わせたものなどの異形勾玉があり,小型である点で共通する。さらに体の全面に線状の彫刻を加えたものが,前期の硬玉製品にも,中期の滑石製品にもある。

 勾玉は日本以外でも,三国時代新羅の墳墓の副葬品として,豊富に出土している。たとえば慶州金冠塚出土の金冠には,57個の硬玉勾玉が装飾として綴じつけてある。腰佩にも硬玉勾玉に金帽をかぶせたものや,金帽をかぶせた勾玉の形を中空に作った金製勾玉を垂下したものがある。ただし新羅の勾玉には,硬玉,瑪瑙のほかに,碧玉,水晶,ガラスなどを材料とするものがあり,形態や大小の統一を欠くうえに,穿孔法も両面,片面の両種を含んでいて,既存の勾玉を収集して利用した可能性が強い。したがって,そのすべてを日本製ということはできないにしても,かなりの比率で日本製品を含むことは否定できない。時代は下るが,日本においても仏像の宝冠や金銅幡(ばん)の装飾に古墳時代の勾玉などを転用することは,奈良時代に実例のあることである。あるいは,沖縄の巫女の持物のなかにも,碧玉製の大型勾玉を見いだすことができる。

 古墳時代には,大型の勾玉形を母体として,その腹背および両側面に,小型の勾玉形がいくつも付着した形に作ったものがあって,子持勾玉と総称している。勾玉と同じ位置に孔があるが,はたして頸飾などとして着装したものか否かはわからない。碧玉製もあるが,滑石製のほうが多い。表面に簡単な文様を線刻したもののほか,頭端を嘴(くちばし)状に彫刻して,孔を眼とする鳥頭になぞらえたもの,腹側に付加したT字形によって頭尾を連結したもの,あるいは2個の子持勾玉を側面で重ね合せた形に作ったものなどの異例がある。子持勾玉の用途については,江戸時代に石剣頭と名づけて刀剣の把頭(つかがしら)と考えるなど,種々の珍説が出ているが,石製模造品と同時に使用することのある祭祀用具の一種ということができる。したがって,5~6世紀の古墳時代の遺物であるが,かつては弥生時代のものとする説もあった。ただし,一見,子持勾玉に似ていて,腹側のみに突起のある櫛形勾玉は,佐賀県宇木汲田(うきくんでん)遺跡から硬玉製品が出土していて,弥生時代にさかのぼるものである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「勾玉」の意味・わかりやすい解説

勾玉
まがたま

曲玉とも書く。逆C字形に湾曲した玉で、頭部が膨らみ孔(あな)が穿(うが)たれ、尾部が細くなっているのが普通の形である。縄文・弥生(やよい)・古墳時代を通じてみられるが、縄文時代のものは湾曲を示すが不定形のものが多く、石器時代勾玉ともよばれ、弥生・古墳時代のものと区別される場合がある。逆C字形に整美された勾玉は、主として弥生時代に現れ、古墳時代に盛行するが、後期に至るとコ字形に変化してくる。材質も縄文時代のものは硬玉、軟玉、蛇紋岩、粘板岩、硅岩(けいがん)、片麻(へんま)岩など多種多様であるが、弥生時代になると硬玉、蛇紋岩、ガラス製のものが多出する。古墳時代は、前期には硬玉が、前期末から中期には碧玉(へきぎょく)が、後期には瑪瑙(めのう)の勾玉が主流をなし、硬玉は減少する。大形の滑石製勾玉で、腹、背、胴などに数個の小勾玉をつけた子持勾玉が出現するのは中期のころで、他の滑石製勾玉とともに祭祀(さいし)に主用されたものと考えられている。なお、頭部に数条の刻線をつけたものは丁字頭(ちょうじがしら)勾玉といわれ、尾部と頭部が付着し環状を呈したものや2個の勾玉が背で付着したものなどは異形勾玉と称されている。勾玉の発生は獣類の歯牙(しが)に穿孔(せんこう)したものが祖形で、のちにその形を模して玉石でつくられたとする獣牙起源説が一般的であるが、縄文時代前期に盛行した飾玉類より発展したとする説が近時有力となってきている。『古事記』には勾玉、『日本書紀』には曲玉が用いられているが、一般には勾玉の字を使用している。勾玉は日本独自の形の玉で、朝鮮半島南部の古墳出土のものは日本よりの伝来品とされている。

[寺村光晴]


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山川 日本史小辞典 改訂新版 「勾玉」の解説

勾玉
まがたま

弥生・古墳時代の装身具・祭祀具。祖型は縄文時代の牙や骨で作った垂飾(すいしょく)に求められる。頭に小穴があき,紐を通して下げた装身具で,古墳からの出土状況や人物埴輪の装飾からみると,各種の玉とともに頸飾などに連ねている。材質は硬玉・水晶・碧玉(へきぎょく)・メノウのほかガラスがあり,九州北部では弥生時代のガラス勾玉を作った鋳型が出土した。ふつうの勾玉のほか,頭に3本の溝が刻まれた丁字頭(ちょうじがしら)勾玉・獣形勾玉・櫛形勾玉・子持勾玉などの種類がある。「古事記」では「勾璁(まがたま)」,「日本書紀」では「曲玉」とある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「勾玉」の意味・わかりやすい解説

勾玉
まがたま

曲玉とも書く。湾曲した玉の一端に穴をあけ,糸を通した装身具の一種。日本では縄文時代からみられ,古墳時代にいたって多用された。また,古代朝鮮でも用いられた。動物の牙に穴をあけて用いたのがその始りといわれ,その後,石,土,さらに弥生時代になると,ガラス,古墳時代には翡翠,碧玉,瑪瑙,琥珀,滑石などでつくられるようになった。大きさや形状はさまざまであるが,この勾玉の変形したものに子持勾玉がある。

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占い用語集 「勾玉」の解説

勾玉

装身具の一つ。日本の縄文時代の遺跡から発見されたものが最古とされており、古墳時代頃から権力の象徴とされていた。丸い玉から尾が出たような形をしており、一端に穴をあけて紐を通し首飾りとした。

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旺文社日本史事典 三訂版 「勾玉」の解説

勾玉
まがたま

縄文時代〜古墳時代にかけて使われた装飾用玉類の一つ
「曲玉」とも書く。湾曲した玉の一端に穴があけてあり,日本で独自に発達した。硬玉・ガラス・めのうなどでつくられた。

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防府市歴史用語集 「勾玉」の解説

勾玉

 C字形に曲がった玉のことです。動物の牙に穴をあけたものが原形ではないかと考えられています。

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世界大百科事典(旧版)内の勾玉の言及

【玉】より

…美しい光沢のある特殊な材料をさす場合にも,その材料で作った装身具などの製品をさす場合にも用いる。珠とも書く。材料としての〈たま〉には,硬玉,軟玉などの玉(ぎよく)のほかに,水晶,ザクロ石,メノウ,碧玉,トルコ石,コハク,埋木(うもれぎ)などの各種の鉱物から,真珠,サンゴなどの動物性のものも含まれる。ただし,何を〈たま〉のうちにいれるかは,時代や地域によってちがいがあり,科学的な成分のほかに,希少性にもとづく価値と,習慣による需要とが,その選定の大きな要因になっている。…

※「勾玉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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