改訂新版 世界大百科事典 「三魔」の意味・わかりやすい解説
三魔 (さんま)
室町中期,幕府政治に関与した側近勢力を指した俗称。僧録司瑞渓周鳳(ずいけいしゆうほう)の日記《臥雲日件録抜尤(がうんにつけんろくばつゆう)》の康正1年(1455)条に禅僧竺雲等連の談話として出ている。将軍足利義政の治政初期は,義政がなお幼年でもあり,従来幕政を運営していた有力守護家による重臣会議が,斯波氏や畠山氏の家督紛争の影響で正常に機能しなくなり,細川家の当主勝元もまだ幼少で後年の政治力はなかった。そこで将軍の乳人今参(いままいり)の局(俗にお今),奉公衆有馬某,廷臣烏丸氏ら非制度的な義政の側近勢力が陰に陽に幕政に介入したので,世人はこれを三魔と称した。しかし今参が近江で刑死してからは三魔の勢力が衰えたものの,義政の実母日野重子,相国寺塔頭蔭涼軒主季瓊真蘂(きけいしんずい),政所執事伊勢貞親らが代わって台頭し,有力守護家の継嗣争いや将軍家の跡目(義視と義尚)争い等に介入したので,幕政はいよいよ混乱し,やがて応仁の乱が勃発した。
執筆者:今谷 明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報