日本大百科全書(ニッポニカ) 「世界がん報告」の意味・わかりやすい解説
世界がん報告
せかいがんほうこく
World Cancer Report
世界保健機関(WHO)の外部専門機関である国際がん研究機関(IARC)が、癌(がん)に関する調査や研究活動の成果、その最新の進捗状況などをまとめ、不定期に公表している報告書。IARCでは化学物質や放射線、ウイルスなどによるリスク評価や発癌性の分類を行っており、報告書は世界40か国以上の約250人の専門家から学際的な協力を得て作成されている。世界の発症状況を調査し、癌の型や発癌に至るメカニズムとその原因、発症の抑制や予防に必要な手立てが掲載されている。2003年が初刊で、2008年に第2号、2014年に第3号が刊行された。
2012年時点の調査結果をもとにした2014年版では、新たに癌と診断された患者は、全世界で約1400万人となっており、これが20年後には2200万人に達するという見通しが示されている。また、患者数の地理的な分布状況が今回初めて公表され、肺癌、胃癌、肝臓癌、食道癌において発症数、死者数ともに中国が世界一多いことが明らかになった。肝臓癌、食道癌の新規患者の5割が中国人であるなど、いずれも世界人口に占める中国の比率を大きく上回っている。中国では大気汚染が悪化しており、喫煙者も多い点から、今後もさらに増え続けると予測されている。
[編集部]