知恵蔵 「主権回復の日」の解説
主権回復の日
2013年4月28日には、自民党安倍晋三政権下、政府主催による初めての式典「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」が憲政記念館(東京都永田町)で開催された。国会議員や知事26人を含む約400人が出席し、壇上には首相・最高裁判所長官・衆参両議院議長という「三権」の長が並んだ。天皇・皇后両陛下も招かれたが、野党から「天皇の政治利用であり憲法に反する」という批判が上がり、陛下の式辞はなかった。しかし閉会後、会場から「天皇陛下万歳」の三唱が起こり、壇上の安倍首相らも唱和した。式典の時間は40分程度。
式典の開催だけでなく、政府が4月28日を「主権回復の日」としたことへの疑問の声も上がっている。1951年、日本は連合国48カ国と第2次世界大戦終結のための「サンフランシスコ講和条約(対日講和条約)」を締結し、翌52年4月28日、本条約の発効によって日本は国際社会に復帰した。しかし、沖縄・奄美諸島・小笠原諸島は米国の施政下に置かれ、同時に「日米安全保障条約」も発効したため、沖縄には引き続き米軍の駐留が認められることになった。このため4月28日は、沖縄にとって、米軍の占領が合法化された「屈辱の日」ともいわれる。
記念式典に、仲井真弘多沖縄県知事は出席せず(副知事が代理出席)、同日、沖縄県宜野湾市では約1万人による抗議集会が行われた。なお、沖縄が日本に返還されたのは、72年5月15日。奄美大島の返還も53年同日、小笠原諸島も68年同日であることから、5月15日のほうが望ましいという見方もある。記念式典の意義についても、講和条約発効から61年も経った今、政府が開催した背景には、「保守層の支持拡大」「愛国精神の高揚」があるという指摘も見られる。
(大迫秀樹 フリー編集者 / 2013年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報