乳房外パジェット病

六訂版 家庭医学大全科 「乳房外パジェット病」の解説

乳房外パジェット病
(直腸・肛門の病気)

 パジェット病ページェット病)は、アポクリン腺管の上皮から発生し、表皮に移動した細胞(パジェット細胞)が真皮内で悪性化したものです。乳房に最も多くみられますが、乳房以外にも肛門周囲、大陰唇(だいいんしん)陰茎(いんけい)陰嚢(いんのう)鼠径部(そけいぶ)腋窩(えきか)にみられることがあります。

 肛門周囲のパジェット病は非常にまれで60代や70代に多く、境界が比較的はっきりした紅斑や湿疹のようにみえ、時に落屑様(らくせつよう)(皮膚がぽろぽろむける)のこともあります。

 症状はしつこいかゆみが出ることが多く、肛門掻痒症(こうもんそうようしょう)肛囲湿疹(こういしっしん))と似ていることから、パジェット病の診断が遅れることがしばしばあります。またボーエン病(コラム)と同様に、しばしば内臓の悪性腫瘍を合併することがあります。

 診断は、生検で特徴的なパジェット細胞を見つけることにより確定します。パジェット細胞はムコプロテインを含んでおり、これを染める特殊な染色法を行って診断します。

 治療は局所切除が行われます。切除範囲が広範囲に及ぶ場合は、皮膚移植が行われる場合もあります。皮下組織に浸潤した病変では、直腸切断術が行われます。局所に限局したものの予後は良好ですが、肝臓や肺、骨などに転移すると予後は不良です。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「乳房外パジェット病」の解説

にゅうぼうがいぱじぇっとびょう【乳房外パジェット病 Extramammary Paget's Disease】

[どんな病気か]
 乳房外(にゅうぼうがい)ページェット病(びょう)ともいい、高齢者の外陰部によくできるほか、肛門(こうもん)の周囲やわきの下にもできます。最初は淡い紅褐色をした平らな病変で、湿疹(しっしん)やいんきんたむしとまちがわれることがあります。外陰部のものは、外陰パジェット病(「外陰パジェット病(外陰ページェット病)」)と呼びます。
 かゆみは軽く、少し進行するとかさぶたしこりができます。見つけにくい場所のため、手遅れになってから診断されることが少なくありません。
 なお、乳房パジェット病は女性の乳房乳頭部(にゅうとうぶ)に生じる乳がんの一種ですが、皮膚の変化は乳房外パジェット病とほとんど同じ特徴を示します。
●自己発見法
 外陰部に赤みのある湿疹のような病変やかさぶたができ、治りにくく、ようすがおかしい場合は皮膚科専門医の診察を受けましょう。
[治療]
 早期のものならば、手術のみで完治します。しかし、進行してリンパ節などに転移すると、化学療法や放射線療法も効かず、治りにくくなります。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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