外陰パジェット病(読み)がいいんパジェットびょう(がいいんぺージェットびょう)(その他表記)Paget Disease of the Vulva

六訂版 家庭医学大全科 「外陰パジェット病」の解説

外陰パジェット病(外陰ぺージェット病)
がいいんパジェットびょう(がいいんぺージェットびょう)
Paget's disease of the vulva
(女性の病気と妊娠・出産)

どんな病気か

 パジェット病は、乳房に発生する場合と乳房以外に発生する場合がありますが、女性の場合、乳房外(にゅうぼうがい)パジェット病のほとんどは外陰に発生します。外陰とは、性器の外側の部分(恥丘(ちきゅう)、大陰唇、小陰唇、陰核、外尿道口、腟前庭(ちつぜんてい)会陰(えいん)など)の総称です。

 パジェット病は、扁平上皮(へんぺいじょうひ)に限局する腺細胞からなるがんですが、時に上皮より深いところに浸潤(しんじゅん)することもあります。大部分は閉経後に発症します。

原因は何か

 明らかな原因は今日でも不明ですが、汗を産生する器官、とくにアポクリン腺という器官に由来する細胞が悪性化したものであるという説が有力です。

症状の現れ方

 初発症状は外陰部のかゆみが大部分で、外陰部の不快感や変色を訴えることもよくあります。長期に及ぶかゆみと灼熱感(しゃくねつかん)、あるいは痛みを伴って、大陰唇に発生することが多く、病変は正常な皮膚との境界が明瞭で、軽度に盛り上がり、紅色を帯びた湿疹様にみえます。

検査と診断

 さまざまな症状を示すので、早期診断のためには注意深い外陰部の観察によって病変部を一部切り取り、組織検査をすることが重要です。

 病変部に潰瘍や腫瘤(しゅりゅう)(はれもの)を認める場合は、浸潤性のがんが共存していることがあり、その有無で予後に大きな差があるので、さらなる精密検査が必要です。またパジェット病は、ほかの臓器にがんが存在する頻度が高いため、全身のがんのスクリーニング検査を考慮すべきとされています。

治療の方法

 手術が治療の基本と考えられます。浸潤性のがんが共存しない場合は、病変から少なくとも2㎝以上、正常に見える皮膚を含めて切除することが必要とされています。摘出した標本のなかに浸潤がんを認めることもあるので、皮下組織全体を残さずに切除することが大切です。

 切除した摘出物に浸潤がんを認めた場合には、広汎外陰切除および両側鼠径(そけい)リンパ節郭清(かくせい)を行います。郭清とは、がんの転移の有無にかかわらず、周辺のリンパ節をすべて切除することです。

 浸潤がんが存在しない場合は、再発率は高いものの生命予後は良好です。浸潤がんが共存する場合は、しばしばリンパ節転移や遠隔転移がみられ、予後は不良とされています。

病気に気づいたらどうする

 長い間続く頑固な外陰部のかゆみや違和感がある場合や、これらの症状がなくても外陰部にやや盛り上がった赤みを帯びた病変に気づいた場合は、婦人科または皮膚科の受診をすすめます。

 疑わしい場合は、組織検査をしないとはっきりとした診断はつきません。医師がすすめる場合は、いやがらずに検査を受けることが大切です。

関連項目

 外陰がん

八杉 利治

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「外陰パジェット病」の解説

がいいんぱじぇっとびょうがいいんぺーじぇっとびょう【外陰パジェット病(外陰ページェット病) Paget Disease of the Vulva】

[どんな病気か]
 パジェット病には、乳房(にゅうぼう)パジェット病(コラム「乳房パジェット病」)と乳房外(にゅうぼうがい)パジェット病(「乳房外パジェット病」)とがあり、乳房外パジェット病のなかでもっとも多いのが、外陰部のパジェット病です。
 アポクリン腺(せん)という汗腺かんせん)に発生したがんで、外陰部、会陰(えいん)、肛門(こうもん)周囲、わきの下など、アポクリン腺の分布しているところに発生します。
 初期には、湿疹(しっしん)のような紅斑(こうはん)(皮下(ひか)血管の充血や拡張による赤い斑)で始まり、のちに湿潤(しつじゅん)(湿った状態)、びらん(表皮表面の欠損)、かさぶたの形成とともに、かゆみ、灼熱感(しゃくねつかん)、痛みなどの自覚症状をともなってきます。
 60歳以上の高齢者がかかりやすく、この年齢層の女性に、治療してもなかなかよくならない外陰部の難治(なんち)性湿疹がある場合は、外陰パジェット病の可能性も考えなくてはなりません。
[検査と診断]
 外陰部の肉眼的所見とともに、生検(せいけん)(組織診断のための切除検査)をして特徴的なパジェット細胞が認められれば、診断は確定します。
[治療]
 パジェット細胞は、皮膚の表層へむかって進展していくことが多いほか、鼠径部(そけいぶ)のリンパ節に転移することがあります。
 したがって治療は、正常な皮膚を含めて広く外陰部を切除するほか、鼠径リンパ節の摘出も合わせて行なう必要があります。
 手術後のフォローアップを要することはいうまでもなく、定期的に通院して再発のチェックを行なわなくてはなりません。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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