医師が患者に接触する行為を診察といい、その目的は、正確な情報を得て正しい診断を下し、的確な治療を行い、その正当性をチェックすることにある。一般に行われている診察のプロセス(過程)は、患者のもっている異常の内容(病歴)を問診によって聞き取ることに始まる。その内容とは、患者が医師を訪れる直接の動機となった異常(現病歴)、患者が過去に罹患(りかん)した疾病についての情報(既往歴)、家族内発生、遺伝性、環境性などを知るための情報(家族歴)、嗜好(しこう)品、常用薬、月経、結婚・出産歴等の情報(個人歴)などである。ついで医師は、患者の現在の健康状態、異常の有無やその程度、性状等について、顔つき、顔色、表情、体格、栄養状態、姿勢、動作などを通じて観察する(視診)。さらには必要に応じて、聴診器、ハンマー(木槌(きづち))、筆、針などの道具を用いての診察(理学的診断)や、より精密に体内の変化をとらえるために、各種のME(メディカル・エレクトロニクス)機器による検査や、患者から得られる検査材料(血液、尿、便など)について行う検体検査なども行われる。医師は問診、診察、検査の三つの情報を整理して、総合的な診断を下すことになる。こうして患者の異常を正しく把握したのちに治療行為に移るわけであるが、その処置の結果を絶えずチェックして、診断と治療の的確さを確かめることも診察のなかに含まれる。
[井上義朗]
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出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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