改訂新版 世界大百科事典 「予測理論」の意味・わかりやすい解説
予測理論 (よそくりろん)
prediction theory
forecasting
古くは惑星の未来の位置を予想することとか,統計的手法を用いた経済予測が試みられたりしたが,しだいに理論的な裏づけが進んで,応用数学の一課題と考えられるまでになった。最近は大型コンピューターの発達により膨大な資料をもとにして,大規模な数値的予測が可能となり,理論の進歩を促している。予測理論がもっとも効果的に用いられるのは時間の推移とともに変化する偶然現象についてである。その数学的モデルとなる確率過程を探し,その構造を用いて未来の値をよりよく予測することが課題となる。例えば,セールス状況を表す単純なモデルにXt=a+bt+Ntがある。ここでXtはt日目の売上げ,a+btが線形トレンド,Ntは平均値0の独立な確率変数列で真に偶然的な量を表す。Xt+h(h>0)の予測値X^t+hはa+b(t+h)で線形トレンドに等しい。一般の弱定常過程{Xt}については,現時点までに観測された量の線形汎関数の中から予測値X^t+hを探す線形予測理論がよく知られている。予測誤差は|Xt+h-X^t+h|2の平均値をとることにして,この誤差を最小にするのが最良線形予測値である。XtがXt=a1Xt-1+a2Xt-2+……+ahXt-h+Ntと表されるARモデル,連続時間のときの有理スペクトルをもつ平均連続弱定常過程などについては最良線形予測値の求め方がよく知られている。一般には,共分散関数がわかれば,スペクトル測度から予測値が解析的に求められる。非線形予測理論はよりよい予測値を与えることにはなるが,まだ理論はあまり進んでいない。
執筆者:飛田 武幸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報