日本大百科全書(ニッポニカ) 「五人回し」の意味・わかりやすい解説
五人回し
ごにんまわし
落語。廓咄(くるわばなし)の代表作。1人の遊女が一夜に5人の客をとることからこの題名が生まれた。喜瀬川(きせがわ)という花魁(おいらん)のもとに、職人、通人ぶった男、書生、江戸っ子を自称する若者、杢兵衛大尽(もくべえだいじん)の5人が登楼したが、喜瀬川は若い衆にうまく頼んで知らぬ顔をしている。女がこないのでそれぞれの客が不平を述べるところにおかしみがあり、また廓遊びの哀愁も漂う。登場人物が多いために演者は人物の使い分けがむずかしく、風俗や情景の描写にも知識や技術を必要とする。古く『七人回し』という同種の咄(はなし)もあったという。近年、サゲ(落ち)を用いなくなったが、もとは喜瀬川が杢兵衛大尽に金をもらって4人の玉代(ぎょくだい)を返し、もう1人分もらって杢兵衛に「おまはんにこれをあげよう」「おれがこれをもらってどうするんだい」「おまはんも四人といっしょに帰っておくんなさい」とサゲた。
[関山和夫]