日本大百科全書(ニッポニカ) 「五度圏」の意味・わかりやすい解説
五度圏
ごどけん
circle of fifths 英語
Quintenzirkel ドイツ語
cycle des quintes フランス語
cercle harmonique フランス語
十二平均律音組織内では、ある音、たとえばハを出発点とし上方(または下方)に完全5度ずつとっていくと、12回目で嬰(えい)ロに達し、これを異名同音でハと読み替えると、同じ音に戻ったことになり一巡する。この循環を円周上に表した図を五度圏という。12音各音を主音とすれば、長短24の調関係の近親性を論じやすい。なお、平均律ではなく純正調内では、純正5度をハから順にとっていくと、12回目にハよりすこし高い嬰ロに達し円は閉じないので、これを「五度螺旋(らせん)」spiral of fifthsとよぶ。平均律は、この螺旋を閉じた圏に収めようとする努力から考案されたとも解釈できる。このような開閉の五度圏は、音楽理論の基礎として、古代ギリシア以来のヨーロッパだけでなく中国や日本でも論じられてきた。
[川口明子]