化学辞典 第2版 「交互炭化水素」の解説
交互炭化水素
コウゴタンカスイソ
alternant hydrocarbon
環式共役系をもつ炭化水素において,任意の炭素原子から出発して一つおきに炭素原子に*印をつけた場合,ベンゼン,ナフタレンなどのように,*印が連続しないような構造をもった炭化水素.いずれも奇数員環をもたない.これに対し,フルベン,アズレンなどのような奇数員環をもつ共役系は,*印が連続するところがあり,交互にならないので非交互炭化水素という.交互炭化水素では,*印を交互につけられるという性質を利用して,分子軌道の解を簡略して求めることができる.交互炭化水素のπ電子密度は,特定の炭素原子に偏らない(クールソン-ラシュブルックの定理).実際に,交互炭化水素は双極子モーメントをもたない.これに対し,非交互炭化水素では,π電子密度の偏りが生じ,双極子モーメントが現れる(フルベン0.423 D,アズレン1.08 D).また,共役にあずかる炭素原子の数が奇数の交互炭化水素(奇交互炭化水素)では,*印のついた炭素の原子軌道のみからなる非結合性分子軌道が存在する.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報