日本大百科全書(ニッポニカ) 「人形使いのポーレ」の意味・わかりやすい解説
人形使いのポーレ
にんぎょうつかいのぽーれ
Pole Poppenspäler
ドイツの作家シュトルムの短編小説。1874年作。ドイツ青春文学珠玉の短編だが、旅芸人の疎外の問題を鋭くとらえている点で、大いに社会性をも有す。細工職人パウル・パウルゼン親方は、書き手として登場している「ぼく」に、なぜ「人形使いのポーレ」というあだ名がついたかを物語る。作品はこの身の上話からなっている。彼は少年のころ、町へきた人形芝居に夢中になり、その旅芸人の幼い娘エーザイと親しくなった。12年後、彼は中部ドイツの町で途方に暮れている彼女に出会い、父親をも引き取って北ドイツの郷里へ戻り、商売敵(がたき)の中傷にもめげず、彼女と結婚、幸福な家庭を築いて今日に至っている。出会いと別れの哀愁誘う旋律のなかで、少年の日の夢と冒険を語り、人間善意の姿を感動的に描いている。
[平田達治]
『国松孝二訳『人形つかい』(角川文庫)』