人民行動党(読み)じんみんこうどうとう(英語表記)People's Action Party

知恵蔵 「人民行動党」の解説

人民行動党

シンガポールが英植民地時代に行われた立法議会選挙(1955年)の半年前に結成。58年、シンガポールは英連邦内自治州となるが、PAPは59年の自治政府の総選挙で多数党になって以来、政権を担当。初代首相リークアンユー。PAPの歴史はリーの歴史でもある。英語教育系エリートの支持を受けたリーは、共産党系グループ(BS=社会主義戦線)と対立しながらもマラヤ連邦との合併を実現、マレーシア連邦13番目の州となった(63年)。しかし中央政府との政治路線の対立が人種対立にまで発展、わずか2年で分離を余儀なくされる(65年8月)。資源も国土も乏しい小国(人口は448万人、2008年)が、「生存のための政治」をスローガンに、20年近くも2けた台の経済成長を遂げ、世界有数の金融・情報センターになったのはリーの指導力のゆえとされる。その権力源泉は、負けない与党PAP。PAPは人員面と予算面で政府とほとんど一体化しており、住宅政策などで少数民族を分散させる選挙区割により議席をほぼ独占してきた。首相がリーからゴー・チョクトンへと交代(90年)する前後には総得票率は下がったものの、「グループ選挙区」(5〜6人を定数とし、得票数で勝った政党が定数を独占する)の導入などで野党を封じ込め、2001年総選挙でも圧勝(全84議席中、野党は2議席)。04年8月、リーの長男で副首相のリー・シェンロンが第3代首相に就任した。06年5月総選挙では、PAPの得票率は前回を8ポイント下回る67%ながら、前回と同じ82議席を獲得した。なお、ゴー・チョクトンは政権内ナンバー2の上級相、リー・クアンユーはナンバー3の顧問相として閣内にとどまり、影響力を保っている。

(片山裕 神戸大学教授 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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