中国の禅宗史書の一つ。30巻。蘇州承天寺の道原の作。北宋の景徳1年(1004)に真宗に上進し,勅許によって入蔵されたことから,《景徳伝灯録》とも呼ばれる。時の宰相,楊億の序がある。過去七仏にはじまって,インドの28代,中国の6代を経て北宋初期に至る,1701人の祖師の名と,伝灯相承(そうじよう)の次第を述べたもの。北宋時代における禅の盛大化とともに,士大夫の教養書の一つとなり,禅の本の権威となって,仏祖の機縁問答を一千七百則の公案と呼ぶのは,本書に収める仏祖の数字に基づく。編者道原の伝は不明であるが,五代より北宋にかけて,江南金陵を中心に盛大となる法眼下3世の弟子の一人で,本書に立伝する宗鏡の編者延寿と同門らしく,法眼の動きを伝えることが詳しい。したがって,本書は法眼に集大成される,そのような唐末五家の実態を知るのに便利であるが,これを臨済禅中心に受け継ぐ《天聖広灯録》,雲門禅中心に受け継ぐ《建中靖国続灯録》,および再び宋代臨済禅中心の《宗門連灯》《嘉泰普灯録》の5本を合わせて,のちに《五灯会元》20巻が編まれる。
執筆者:柳田 聖山
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…延宝は完成時の年号,伝灯は悟りの真理を伝えることである。禅僧約1050人の行状や悟りを得たとき(開悟)の機縁語句等を載せ,また天皇や相将居士の修禅者の伝や,著名な禅僧の広語や雑著を抄録するが,体裁は《景徳伝灯録》など中国の伝灯録に倣っている。【竹貫 元勝】。…
…本書は,このような雪峰に集大成される唐代各地の祖師禅の成果で,文僜には別に《千仏新著諸祖頌》があって,迦葉(かしよう)より馬祖に至る祖師の賛を集めていて,本書のそれぞれの章末に付録される。本書に遅れること50年,北宋の1004年(景徳1)に《伝灯録》30巻が成立し,勅許によって入蔵,本書は《伝灯録》の盛行に圧せられて,中国にその伝を断つが,高麗高宗が彫造する高麗版《大蔵経》の補版として,その32年(1245)に開版され,現在の本は,韓国慶尚南道の伽倻山海印寺に存する版木により,今世紀にはじめて印刷された。《伝灯録》が各時代にわたって開版され盛行したために,その本文にかなりの異本を生むのに比し,本書は今まで読まれなかったために,かえってよく原型を保存しており,語文,思想,歴史などの面で,敦煌文献につぐ新資料として高い価値をもっている。…
※「伝灯録」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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