保長(読み)ほちょう

精選版 日本国語大辞典 「保長」の意味・読み・例文・類語

ほ‐ちょう‥チャウ【保長】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 令制で、五保の制の保の長。在地の有力者が任命され、治安・造籍・納税の責任を負わされた。
    1. [初出の実例]「保長依知秦公宅成、保子依知秦公 家成」(出典:吉田文書‐延暦一五年(796)九月二三日・近江国大国郷墾田売券)
  3. 奈良・平安時代、京の行政区画である保の長。有力者が任命され、治安・行政の末端の責任を負わされた。
    1. [初出の実例]「親王及公卿事三位已上以家司保長」(出典:類聚三代格‐二〇・昌泰二年(899)六月四日)
  4. 村の隣保組織の長。組頭。
    1. [初出の実例]「曩日吾隣村の保長(ホテウ) 組頭の改名 の宅にて」(出典:開化のはなし(1879)〈辻弘想〉二)
  5. 中国、唐の隣保制、宋の保甲法など、警察・徴税を目的に編成された郷村組織である保の長。保正。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の保長の言及

【五保】より

…5家(5戸のこと)をもって1保を構成したので五保と称する。保には保長が置かれ,50戸からなる里の下部組織として,保内の相互検察,貢租徴税の確保などの義務が課された。保内の人の他行や止宿者の相互告知,保内の逃走戸の追訪と田地の代耕,租調の代輸などはその一端で,大宝令の注釈書である《古記》は,僻遠の地で25戸以下の場合は里長を置かず,保長をして賦役を催駆せしめるとしている。…

【刀禰】より

…(2)平安時代初・中期平安京の保(ほ)あるいは村落の有力者の称。平安京では土地の区画単位である坊をさらに四つに分けてその一区画を保と呼び,そこに保長がおかれたが,しだいに有名無実化したため,これにかわって保の有力者が刀禰に任命されるようになった。保の刀禰は検非違使(けびいし)によって任命され,非違の検察,土地の売買の保証(保証刀禰という)などにあたった。…

【保】より

…(1)律令制下で,郷(里)の下に置かれた末端行政組織。5戸をまとめて保とし(五保ともいう),保長のもと治安維持,徴税などについて,連帯責任を負わされていた。702年(大宝2)の美濃国戸籍にみえるのが確実な例であるが,それ以後の籍帳にはほとんどみえず,しだいに地縁的に家を基準にして組織されるようになった。…

※「保長」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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