日本大百科全書(ニッポニカ) 「偉大なギャツビー」の意味・わかりやすい解説
偉大なギャツビー
いだいなぎゃつびー
The Great Gatsby
アメリカの作家F・スコット・フィッツジェラルドの長編小説。1925年刊。アメリカ中西部の貧農の息子であったギャツビーは早くから成功の夢を抱いていた。第一次世界大戦中アメリカ陸軍の将校となった彼は上流階級の娘デイジーと恋仲になる。だが彼がヨーロッパ戦線に渡ったあと、彼女は金持ちの、別の男と結婚してしまう。帰還したギャツビーは酒の密輸で巨万の富を得、いまは人妻となった彼女のあとを追ってニューヨークへ出てロング・アイランドに豪邸を構える。一度は彼女と縒(よ)りを戻すことに成功したかにみえたが、結局はデイジーの金持ち特有のエゴイズムの犠牲となり、見捨てられて一命を落とす。1920年代のアメリカを背景にし、荒廃した現代の物質主義文明のなかで、いかに「アメリカ人の夢」がゆがめられ崩壊するかを描いた20世紀アメリカ小説屈指の傑作である。
[渥美昭夫]
『野崎孝訳『偉大なギャツビー』(1979・集英社)』