犠牲(読み)ぎせい

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

犠牲
ぎせい

ともいう。集団の成員の安寧あるいは動植物の増殖を願って行う宗教的行為。神霊物品供え供物と,動物を殺害して行う動物犠の2つの形態を含む。供物には,飲食物と一般の物品との2つの場合があり,神と人との関係が確立すると,飲食物を供物とすることが多くなる。日本の初穂儀礼にみられるような初物の供進もこれである。動物犠牲は動物を殺害することにより,その霊魂によって神への願いの伝達をはかるということと,動物の血と霊魂を神霊に贈るという意味をもつ。いずれにしても供進あるいは動物供犠に共通するのは,それらの物の聖化と喜捨であり,E.デュルケムは貴重なものの放棄を犠牲の本質的な要素としてあげている。

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デジタル大辞泉の解説

ぎ‐せい【犠牲】

神、精霊などをまつるときに供える生き物。いけにえ。
ある目的のために損失となることをいとわず、大切なものをささげること。また、そのもの。「道義のために地位も財産も犠牲にする」「犠牲を払う」
災難などで、死んだり負傷したりすること。「戦争の犠牲となる」

サクリファイス[書名・映画]

《「犠牲」と書く》柳田邦男によるノンフィクション。副題「わが息子・脳死の11日」。平成7年(1995)刊行。自殺を図った息子の脳死から腎提供に至る11日間を記録した作品。著者には本作を含むノンフィクションのジャンル確立の功績に対し、第43回菊池寛賞が贈られた。
《原題、〈スウェーデン〉Offret》1986年公開のフランス・スウェーデン合作映画。同年12月にフランスのパリで客死したソ連出身の監督、タルコフスキーの遺作。核戦争勃発と世界の救済を主題とする作品。第39回カンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリ、国際映画批評家賞など4賞を受賞。

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百科事典マイペディアの解説

犠牲【ぎせい】

日常語としては,身命をささげ身代りになって他のために尽くすことを指すが,本来は生贄(いけにえ)の意で,(人間を含む)動物を殺して神に捧げる宗教儀礼をいう。E.B.タイラーによれば神霊を喜ばせ,なだめるためのもので,犠牲動物は家畜が多い。犠牲の形式は,ただ殺すだけでなく肉を神と共食し,血をすすって血盟し,血を体に塗ったりする場合もあり,M.モースは流血の表象に注目して祝福の受容とけがれ祓いを象徴的に行う儀式とみなした。
→関連項目人身供犠

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世界大百科事典 第2版の解説

ぎせい【犠牲】

宗教儀礼の分類の仕方には種々あるが,儀礼において,動物等の殺害ないし供物の破壊をともなう儀礼を,宗教学文化人類学では一般に犠牲sacrificeと呼んでいる。もともとこの言葉はラテン語でsacer+facere,つまり〈聖なるものにする〉という意味を含み,日本語の生贄(いけにえ),供犠(くぎ)に該当する。ただその儀礼的な意味から考えると,たんなる〈供え〉とは異なるだけに,犠牲という語のほうが適切であると思われる。

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大辞林 第三版の解説

ぎせい【犠牲】

目的のために身命をなげうって尽くすこと。ある物事の達成のために、かけがえのないものを捧げること。また、そのもの。 「 -を払う」 「青春を-にする」
「犠牲者」の略。 「戦争の-となる」
神に捧げるために生き物を殺すことやその儀礼。また、その生き物。いけにえ。供犠くぎ。 → 人身御供ひとみごくう

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世界大百科事典内の犠牲の言及

【儀礼】より

…そしてロバートソン・スミスと同様に彼も,儀礼には社会の統合を増す機能があると唱えた。 上記の2人が対象とした儀礼は,主として犠牲の祭儀であり,彼らの分析はその儀礼の内容のうち,殺す行為の意味と殺される獣の役割に向けられていた。一方,ハリソンJane H.Harrisonとファン・ヘネップの2人は,儀礼の形態と構造に関する研究において意義ある貢献をなした。…

【祭壇】より

…祭壇は供進された供物を媒介として神的存在と人との通路づけの場であり,両者をつなぐ儀礼的な聖なる空間を構成する。祭壇の原意についてみると,祭壇を意味するヘブライ語mizbēaḥでは〈犠牲の場所〉で,犠牲動物を屠殺し焼いたり,血をささげる壇か,供進して香をたく壇を意味する。古代アラビア人は自然石の祭壇のかたわらで犠牲動物をほふり,その血を祭壇の上ないし基底部に注ぎかけた。…

【殉死】より

…それはこの事件が,高い西欧的教養を積んだ二人の文学者の内心に,近代文明と伝統的文化との関係についての深い反省をよび起こしたことを意味している。【尾藤 正英】
[犠牲としての殉死]
 王侯の死に際して臣下がみずからの意志で死ぬという意味での殉死は広く見られる現象ではない。おそらくこうした自殺としての殉死が多少とも制度的に存立しうるとすれば,ごく特殊な歴史的・社会的条件下で孤立した現象として発生したものに限られるであろう。…

【殉葬】より

…それぞれの社会と同じような来世の存在を信じていた時代の風習で(来世観),古文献によると,生きながら埋められた場合もあった。人間に限らず犬や馬を葬ったものも殉葬というが,犠牲として区別すべきものもある。例えば殷代の武官村殷墓のように,墓壙の埋土中にあった頭骨だけの34個や,墓の南60~70mあたりにある大量の頭のない俯身葬人骨などがそれである。…

※「犠牲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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