偽平衡組織(読み)ぎへいこうそしき(その他表記)false equilibrium structure

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「偽平衡組織」の意味・わかりやすい解説

偽平衡組織
ぎへいこうそしき
false equilibrium structure

擬平衡組織または非平衡組織ともいう。高温または高圧の状態から,材料を急激に冷却または減圧すると,高温高圧下における組織がそのまま常温常圧まで持越され,見かけ上安定に存在する場合がある (→共析 , 同素変態 ) 。しかし,この組織は本来不安定なはずであるため,偽平衡組織という。典型的な例がダイヤモンドで,これは地質時代に炭素が高温高圧の地殻内に閉じ込められた結果生じた偽平衡組織であり,常温常圧下での炭素結晶,いわゆる黒鉛とはまったく結晶構造が異なる。鋼の焼入れにおいて現れる組織マルテンサイトもその例である。合金熱処理はすべて,その偽平衡組織をなんらかの意味で利用することを目的とした,人為的作業である。

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