先天性食道疾患(読み)せんてんせいしょくどうしっかん(英語表記)Congenital esophageal disease

六訂版 家庭医学大全科 「先天性食道疾患」の解説

先天性食道疾患
せんてんせいしょくどうしっかん
Congenital esophageal disease
(食道・胃・腸の病気)

どんな病気か

 先天性食道疾患はまれな病気であり、先天性食道閉鎖症(へいさしょう)、先天性食道狭窄症(きょうさくしょう)などがあげられます。なかでも食道閉鎖症は、食道の先天性疾患の代表的なものとして知られています。

 食道が胃に連続することなく途中で閉鎖していたり、また気管食道(ろう)(気管と食道が交通している状態)の併存が多くの症例で認められます。食道閉鎖と気管支瘻の関係から、病型分類がなされています(図1)。

 Gross による食道閉鎖の病型分類ではC型が最も多く、口側食道は閉鎖していて、胃側食道は気管と交通している症例です。次に多い病型はA型で、口側食道と胃側食道は盲端(もうたん)(閉じている)となっていて、気管食道瘻のない症例です。

原因は何か

 先天的なものであり、その原因については不明です。高率に他の臓器合併奇形が認められます。心血管、消化管、泌尿器系の障害などがあげられ、とくに心臓奇形の合併は頻度的にも多く、予後を左右する重要な要因のひとつです。

症状の現れ方

 多くの症例で、生後まもなく何らかの症状が現れます。唾液(だえき)を飲み込んでも食道が閉鎖しているため、口から泡状に流れ出てしまいます。呼吸困難や肺炎併発から診断される症例もあります。頻度的にも多い Gross のC型であれば、呼吸によって胃は空気で拡張し、嘔吐によって胃内容が気管に流れ込み、肺炎を併発する要因となります。

検査と診断

 出生前診断のできる症例もあり、羊水過多所見胎児の超音波検査で胃泡(いほう)が確認しがたい所見があった時など、本疾患が疑われます。

 X線検査では、鼻から細いカテーテルを挿入すると、食道閉鎖部でカテーテルの反転する所見が得られます。

治療の方法

 外科手術が必要であり、基本的には、まず気管と食道の交通を遮断(しゃだん)する処置(気管食道瘻の閉鎖)が必要です。次に離れた口側食道と胃側食道を吻合(ふんごう)する処置が必要となります。食道閉鎖と気管食道瘻の状況により、術式も大きく異なります。一期的根治術では気管食道瘻の結紮(けっさつ)切離と食道吻合が同じ日に行われます。全身状態の不良な症例や閉鎖食道間の距離が離れた症例では、分割手術が選択されます。

島田 英雄, 幕内 博康


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内科学 第10版 「先天性食道疾患」の解説

先天性食道疾患(食道疾患)

 発生学的に上部消化管と気管とは前腸を原基として分離していくので,先天性食道疾患の多くは気管と関連した先天奇形として発現する.このうち最も重要なものは先天性食道閉鎖症先天性食道狭窄症である.両者はときに合併することもある.[前田貢作]
■文献
Gross RE: Surgery of Infancy and Childhood, WB Saunders, Philadelphia, 1953.
Maeda K, et al: Circular myectomy for the treatment of congenital esophageal stenosis due to tracheobronchial remnant. J Pediatr Surg, 49: 65-67, 2004.
日本小児外科学会学術・先進医療検討委員会:我が国の新生児外科の現況—2008年新生児外科全国集計—.日小外会誌,46:101-114, 2010.
Spitz Ll: Esophageal atresia: past, present, and future. J Pediatr Surg, 31: 19-25, 1996.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「先天性食道疾患」の意味・わかりやすい解説

先天性食道疾患
せんてんせいしょくどうしっかん
congenital esophageal diseases

食道の先天性異常には種々ある。先天性食道全欠損は無脳児にみられ,生後まもなく死亡するが,きわめてまれである。先天性食道閉塞および狭窄の半分は未熟児にみられる。放置すれば摂食不能,吸引性肺炎などにより生後まもなく死亡するが,近年,小児外科の進歩によって手術が可能となってきた。ほかに短小食道,長大食道,重複食道などがある。

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