内科学 第10版 「先天性食道狭窄症」の解説
先天性食道狭窄症(先天性食道疾患)
発生頻度は低く,食道閉鎖症の10%程度の発生率と考えられている.ほとんどが下部食道に認められ,①気管原基迷入型(tracheobronchial remnant),②線維肥厚型(fibromuscular),③膜様狭窄(web)の3型に分けられる.50%以上が気管原基迷入型で,線維肥厚型は40%程度,膜様狭窄はまれである.
臨床症状
新生児期にはほとんど無症状であるが,離乳食が開始され固形物を摂取するようになると食道の通過障害を呈する.嘔吐,食道異物,呼吸器感染症,発育障害などを呈する.高度の狭窄ではミルクが通りにくいこともある.
診断
食道造影を行うことで容易に診断できる.気管原基迷入型では下部食道に限局型のいわゆるabrupt narrowingの所見がみられる(図8-3-3).線維肥厚型では下部食道に向かう緩やかな狭窄(tapered narrowing)の所見が特徴的である.膜様狭窄は中部食道にみられることが多いとされている.最近では超音波内視鏡を用いて食道壁内の構造を観察することが可能となり,狭窄の範囲や原因を適確に診断できるようになった.
治療
病型により治療法が異なる.気管原基迷入型では食道壁内に迷入した軟骨組織の摘出または迷入組織を含めた食道壁の切除が必要となる.線維肥厚型ではバルーンカテーテルによる狭窄部の食道内腔からの拡張が有効である.バルーン拡張のみでは効果がない場合はHellerの筋層切開術を行うことがある.
予後
おおむね良好である.狭窄の範囲が長い場合には食道機能に問題を生じる場合もあるが,頻度は多くない.拡張後に胃食道逆流を生じる場合は逆流防止手術を追加する.[前田貢作]
■文献
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出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報