日本大百科全書(ニッポニカ) 「先山・後山」の意味・わかりやすい解説
先山・後山
さきやまあとやま
炭鉱の採炭現場(切羽(きりは))での労働者の名称。直接石炭の採掘に従事する労働者を先山といい、採掘した石炭の運搬に従事する労働者を後山または後向(あとむ)きといった。採炭先山、採炭後山(または後向き)ともいい、一般に先山1人と後山1人(ときには2人)で一つの労働単位を構成し、後山は先山の指揮命令に従った。かつて九州松浦地方の例で、先山・後山で1日に石炭360貫目(1350キログラム)を採掘したという。夫婦または父娘で組み、夫または父が先山を、妻または娘が後山をつとめることが多かった。今日では、経験豊富で指導的立場にある熟練鉱員を一般的に先山とよんでいる。
[黒岩俊郎]