改訂新版 世界大百科事典 「共同偏視」の意味・わかりやすい解説
共同偏視 (きょうどうへんし)
conjugate deviation of the eyes
左右の眼球が一方向を向いたままの状態にあることをいう。水平方向のものと垂直方向のものとがある。左右の方向への眼球運動(水平共同視)は,大脳皮質から橋(きよう)への神経回路と,橋にある水平共同視中枢によって営まれているが,これらの経路のどこかに病変が生ずると,一定方向への水平共同視ができなくなり,眼球はそれと反対側にひかれた状態のままとなってしまう。このような状態が麻痺性の共同偏視である。脳卒中などのように大脳半球内の病変では,このような麻痺性共同偏視を生じ,眼球は病変のある側をにらむような位置をとることが多い。これに対し,てんかん発作などによって水平共同視の経路が刺激されると,刺激と反対側に向かう刺激性共同偏視を生ずる。上下方向への眼球運動(垂直共同視)は,中脳の背側にある垂直共同視中枢により支配されていると考えられるが,上方視と下方視の経路は互いに密接に関係しており,どちらか一方の経路のみが破壊されるということは生じにくいため,垂直方向のみの共同偏視はまれである。
→眼球運動
執筆者:岩田 誠
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報