改訂新版 世界大百科事典 「内豎省」の意味・わかりやすい解説
内豎省 (ないじゅしょう)
奈良時代に設置された令外の官制。内豎は〈さいさわらは〉と訓じ,宮中にあって,天皇の命をうけ雑務雑使を務めた内豎所(豎子所)が発展した省で,767年(神護景雲1)7月に設置され,772年(宝亀3)2月廃止された。職員は卿,大・少輔各1名,大・少丞各2名,大録1名,少録3名で,管下の寮司は未詳であるが,内豎,舎人(とねり)が配置されていた。職掌は明らかでないが,称徳天皇の勅命を伝達し,後宮の女官諸司を統轄し,内廷の警護に当たるものであったと思われる。奈良時代後期の初めは光明皇太后,孝謙(称徳)天皇と女性が権力を掌握し,藤原仲麻呂,弓削道鏡など特定の側近が政務に関与したため,しばしば太政官制度の外に令制外の新官司が置かれた。この内豎省もその一つで,称徳天皇の政権を支える目的で設置され,道鏡,吉備真備ら称徳天皇の寵臣勢力がその運営の中心を占めたと思われる。
執筆者:山本 信吉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報