改訂新版 世界大百科事典 「分光写真」の意味・わかりやすい解説
分光写真 (ぶんこうしゃしん)
spectrogram
分光写真器により撮影されたスペクトル写真をいう。写真感光材は光の波長領域の中で極紫外から近赤外域にかけての良好な光検出素子の一つであると考えてよい。二次元的光検出作用と同時に積分ならびに記録作用があるため,現像操作が必要であるものの,各種光電検出器が普及している現在でも広く用いられている。分光写真器は広い波長域のスペクトルを1回の露出で撮影できるため,分光写真上には広域波長情報とスペクトル強度情報を同時に乗せることができる。分光写真上の情報の読出しは,波長に関しては波長標準光源と未知光源のスペクトルを上下に隣接撮影したものを用い,コンパレーター(顕微測長器の一種)によって相互位置を精密比較することにより決定する。またスペクトル強度はマイクロデンシトメーター(測微濃度計)により黒化度値として読み取られる。分光分析などの実用面では黒化度によるスペクトル強度の相対比較でこと足りることが多い。黒化度から照射光量を求めるには写真測光の手続を踏めばよいが,正確な値を求めることはむずかしい。
分光写真によるスペクトル情報の取得手法を光電的に実行するのが二次元イメージセンサーを用いたシステムである。しかし紫外・可視の広域スペクトル全体を大ざっぱに把握したり,高い分解能が要求されるときなど,簡便さという点からも分光写真の利用価値は大きい。
→光検出器
執筆者:南 茂夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報