光検出器(読み)ヒカリケンシュツキ(英語表記)photodetector
light sensor photodevice
photosensor

デジタル大辞泉 「光検出器」の意味・読み・例文・類語

ひかり‐けんしゅつき【光検出器】

光を検出し、電気信号に変換する装置光伝導セルフォトダイオード光電管などで入射光による電流を測定する。フォトディテクター光検知器

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改訂新版 世界大百科事典 「光検出器」の意味・わかりやすい解説

光検出器 (ひかりけんしゅつき)
photodetector
light sensor photodevice
photosensor

古くは波長380~780nmの可視域電磁波を光と称したが,現在,光とは10nm~1mmの電磁波を指し,きわめて広い波長域を含む。光の検出は広い意味での光と物質の相互作用を原理としており,化学光量計や写真感光材もその中に入るが,一般には光と物質の相互作用の結果を電気信号の形として取り出すものを指し,光検出器と光電検出器は同義語と考えてよい。光検出器を光と物質の相互作用によって分類すると,光子(量子)効果型,熱効果型,波動相互作用型に大別される。

(1)光子(量子)効果型 入射光子と物質内の束縛電子,あるいは自由電子との相互作用を利用したものである。入射光子が物質表面に吸収され,その結果,外部に電子を放出する現象を外部光子効果(外部光電効果),また放出される電子のことを光電子と呼ぶ。光子1個のもつエネルギーはhν(hプランク定数,νは光の振動数)で表されるが,この値が光を検出する物質表面で決まる“しきいポテンシャル”Et以上でないと光電子は放出されない。Etはこの場合光電子仕事関数といわれるものに相当し,光電面が感じうる長波長側の限界(限界波長)を決める。したがって広波長域で高い感度をもたせるためEtを下げる努力がなされ,現在では金属よりも半導体光電面がもっぱら用いられるが,波長1μmを大きく超えるものはない。外部光子効果を用いた検出器の代表的なものは光電管と光電子増倍管である。

 入射光子によって励起されたキャリア(電子や正孔)が物質中にとどまり,その電気的性質を変化させる現象も光子効果の一つであって,内部光子効果(内部光電効果)と呼ばれ光検出に広く用いられる。束縛電子と光子との相互作用に基づく光伝導効果,光起電効果,光電磁効果,また自由電子と光子の相互作用に基づくフォトンドラッグやホットエレクトロン効果などが内部光子効果に属する。検出素子材料としてはもっぱら半導体が使われ,真性半導体の禁制帯エネルギーギャップ,不純物半導体の不純物イオン化ポテンシャルなどがEtに相当し,それにより限界波長が決まる。光伝導型検出器(光導電セル)と光起電型検出器(光起電力セル)がもっともよく実用される。前者は素子抵抗が入射光強度によって変化する性質を利用するため,検出器本体は電極の間に素子材料をはさんだ簡単な構造である。素子材料としては,紫外・可視用にCdSやCdSeが,また赤外用にPbS,PbSe,InSbのほかAu,Hg,Cu,ZnでドープされたGe,HgCdTeなどの混晶が使われている。限界波長を数μm以上にもってくるためにはEtのきわめて小さな材料を使う必要があるが,室温での熱励起によるキャリアの増大を避けるため液体窒素液体ヘリウムで冷却しなければならない。後者の光起電型は,素子内部に生起した内部ポテンシャル障壁の作用により,光励起された電子と正孔とを分離することで起電力を発生させるものである。半導体のp-n接合を用いるものが広く実用されており,代表的なものが可視域を中心に用いられているシリコンセルで,太陽電池もほぼ同じ形態をとる。光起電型検出器のp-n接合に逆バイアスを与えたものは良好な測光用検出器として動作し,これをフォトダイオードと呼んでいる。基材としてはSiやGeのほかに,とくに赤外域ではInSb,InAs,HgCdTeなどが用いられる。

(2)熱効果型 入射光を全波長域にわたってほぼ一様に吸収する受光面を用いて光を熱エネルギーに変換し,その温度上昇を熱-電気変換器によって電気信号に変えるという過程を検出原理としている。光子効果型と異なり光のパワーに対する波長感度特性がほぼ平たんであり,長波長赤外域においても常温動作のものを作りうる点が特徴である。検出器は熱-電気変換部によって特徴づけられ,熱電対温度計を用いた熱電対や熱電堆,抵抗温度計を用いたボロメーター気体温度計を用いたゴレーセルGolay cell,焦電現象を利用した焦電検出器pyroelectric detectorなどが実用されている。

(3)波動相互作用型 光の電磁波としての性質が直接物質との相互作用を誘起する現象を利用したもので,光ヘテロダイン検出器,パラメトリック検出器,ジョセフソン検出器などがある。前2者はマイクロ波領域で用いられていた検出法を光の領域にもち込んだものと考えてよい。

 以上は光検出器を動作原理から説明したものであるが,構造上から眺めると単一型と多チャネル型に分けられる。多チャネル型には一次元と二次元のものがあり,後者には以前からあるテレビ用の撮像管が含まれる。とくに内部光子効果型は集積回路技術を用いて高密度化が容易であるため,MOSやCCD(電荷結合デバイス)方式の一次元あるいは二次元型がイメージセンサーimage sensorと名付けられて普及している。
光電素子
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「光検出器」の意味・わかりやすい解説

光検出器
ひかりけんしゅつき
photo detector

光を検出する素子,装置で,光を照射した際に生じる真空中への電子の放出 (光電子放出) ,導電率の変化 (光導電) ,起電力発生 (光起電) など,いわゆる光電効果を用いたものが多い。光を熱として検出する熱電対や,熱変化により電荷が発生する焦電効果を用いたものもある。光電管,光電子増倍管など真空管型の光検出器は光電子放出効果を利用したもので,検出する光の波長域に応じて光電子面 (光照射時に電子を放出させる部分) の材料が選ばれる。最近では半導体の光導電効果を用いる光導電セルおよび光起電力効果を用いる光起電池,フォトダイオードフォトトランジスタなどが数多く用いられている。半導体のエネルギー間隙の大きさによって応答する波長域が決められる。光導電セルの場合,可視域では硫化カドミウム,セレン化カドミウムが用いられ,赤外域では硫化鉛,セレン化鉛,テルル化鉛,インジウム・アンチモンなどが用いられる。ゲルマニウムに金を不純物元素として添加したものも赤外用としてよく用いられる。フォトダイオード,フォトトランジスタには主としてシリコンが用いられ,可視域から近赤外域の光検出が可能である。フォトトランジスタには増倍作用があり高感度となる。

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