積分(読み)せきぶん

精選版 日本国語大辞典 「積分」の意味・読み・例文・類語

せき‐ぶん【積分】

〘名〙
※和蘭学制(1869)〈内田正雄訳〉中学条例「諸術学校の科目左の如し。〈略〉四 微分積分」
② (━する) 原始関数。また、それを求めること。
比較言語学に於ける統計的研究法の可能性に就て(1928)〈寺田寅彦〉「若し中心から不断供給が続けられて居れば、此れを時間tに対して積分する事になるであらう」
③ (━する) 定積分。また、それを求めること。

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デジタル大辞泉 「積分」の意味・読み・例文・類語

せき‐ぶん【積分】

[名](スル)
与えられた関数について、微分してこの関数になるすべての関数。また、それを求めること。不定積分
ある関数で表される曲線x座標軸に挟まれた部分を、一定区間に区切ってその面積を極限値として求めること。またその極限値を定積分という。このとき、x軸より上部の面積を正、下部を負として定義する。微分してfx)になる関数、すなわちfx)の不定積分をFx)とすると、積分記号∫を用いて、Fx)=∫fxdxと関係づけられる。区間[a,b]における定積分の値Fは、関数Fx)にxabの値を代入して、その差をとることで得られる。すなわちFFb)-Fa)で求められる。
[補説]これら積分と微分が互いに逆の演算であるという関係性は微分積分学の基本定理とよばれ、17世紀後半にニュートンライプニッツによって独立して導かれ、やがて解析学という数学の一大分野に発展した。ある現象を特徴づける数量の変化を表す関数があり、それを積分した関数が得られれば、変化の積み重ねによって起こりうる現象を予測したり、数量を見積もったりすることができる。このように、積分は微分とともに、現代においてさまざまな現象を数学的に記述するための重要な手法となっている。

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百科事典マイペディア 「積分」の意味・わかりやすい解説

積分【せきぶん】

不定積分または定積分を単に積分ともいい,これらを求めることを積分するという。〔不定積分〕 導関数F′(x)がf(x)に等しい関数F(x)をf(x)の不定積分または原始関数といい,∫f(x)dxで表す。f(x)がxの連続関数ならその不定積分は必ず存在し,加える定数だけを除いて一意的にきまる。〔定積分〕 区間[a,b]で有界な関数f(x)に対し,[a,b]を分点x(/0)(=a)<x1<x2<…<x(/n)(/-)1<x(/n)(=b)によってn個の小区間[x(/i)(/-)1,x(/i)](i=1,2,…,n)に分け,[x(/i)(/-)1,x(/i)]内にそれぞれ任意の点ξ(/i)をとって,和(式1)を作る。n→∞,(x(/i)−x(/i)(/-)1)→0としたときS(/n)が一定の数Iに収束するならば,f(x)は[a,b]で(リーマン)積分可能であるといい,(式2)と書いてこれをf(x)の[a,b]における定積分という。f(x)が連続なら積分可能で,積分の上端を変数にとった(式3)はf(x)の不定積分であり,(式4)の関係がある。→微分積分方程式ルベーグ積分
→関連項目求積法原始関数微分積分学

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「積分」の意味・わかりやすい解説

積分
せきぶん
integral

x の定義域を axbx の関数を f(x) とするとき,f(x)=dF(x)/dx を満たす関数 F(x) が存在すれば,F(x) を f(x) の不定積分あるいは原始関数といい,F(x)=∫f(x)dx と書く。記号 ∫ を積分記号といい,この F(x) を求めることを積分するという。また区間 [ab] で定義された x の関数 f(x) のリーマン和 Sn が一定の有界な極限値に近づくとき,この極限値を と書き,これを [ab] における定積分あるいは単に積分といい,これを求めることを積分するという。与えられた関数の不定積分あるいは定積分を求めるための算法を積分法といい,積分法およびこれに関連した理論や応用を研究する数学の分科を積分学という。また,微分方程式を解くことを,積分するといったり,その解を積分といったりすることもある。

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世界大百科事典 第2版 「積分」の意味・わかりやすい解説

せきぶん【積分 integral】

円や放物線と直線で囲まれた平面図形の面積を求めることは,ギリシア時代から知られていたが,これらをもっと一般に,系統的に扱うのが積分法であって,その中心的概念が積分である。積分法は微分法とともに17世紀にI.ニュートンとG.W.ライプニッツによって発見された。積分は,曲線で囲まれた平面の部分の面積や,曲線の長さ,関数の平均値などの計算に用いられるばかりでなく,種々の物理量を定義し,計算するにも重要である。

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世界大百科事典内の積分の言及

【数学記号】より

…一方では記号のよしあしが数学の進歩に深いかかわりのあることも知られている。微積分学において,I.ニュートンの記号を守り続けたイギリスを,G.W.F.ライプニッツの記号を使ったヨーロッパ大陸が凌駕(りようが)してしまったのは有名な例である。
[四則の記号]
 +,-,×,÷は15世紀から17世紀にかけてくふうされ使われるようになった。…

※「積分」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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