制御性T細胞の異常性(IPEX症候群)

内科学 第10版 の解説

制御性T細胞の異常性(IPEX症候群)(原発性免疫不全症候群)

(10)制御性T細胞の異常症(IPEX症候群)
概念・病因
 本症の原因が制御性T細胞の異常であることから,Foxp3遺伝子がヒトの制御性T細胞の生成に必須であることが明らかにされた.
臨床症状
 生後早期から,重症の水溶性・血性下痢,1型糖尿病と甲状腺機能低下症など多臓器の内分泌障害,アトピー性皮膚炎,自己免疫性溶血性貧血・好中球減少症・血小板減少症を呈する.
検査成績
 リンパ球分画・増殖反応,血清IgG,IgMは正常であるが,血清IgE,IgAの高値と好酸球増加を認める.各種の自己抗体を認め,末梢血中のCD4CD25の細胞は存在するが,Foxp3蛋白を欠損する.
診断
 乳児期の男児がIgE上昇を伴う難治性の重症下痢を呈し,1型糖尿病を合併した場合に疑い,制御性T細胞中のFoxp3蛋白の欠損と遺伝子検査で確定する.
予後
 適切な治療が行われなければ乳児期に不幸な転帰をとる.
治療
 対症的に輸血ホルモン補充療法,経静脈栄養が必要なことがある.治療に対する重症のアレルギー反応に注意が必要である.免疫抑制薬が有効なことがある.根治には,早期の造血幹細胞移植が必要であるが,生着不全報告が多い.[峯岸克行]
■文献
Notarangelo LD, Fischer A, et al: Primary immunodeficiencies: 2009 update. J Allergy Clin Immunol, 124: 1161-1178, 2009.
Ochs HD, Smith CIE, et al: Primary Immunodeficiency Diseases, 2nd ed, Oxford University Press, New York, 2007.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報