朝日日本歴史人物事典 「則重」の解説
則重
鎌倉後期の越中(富山県)の刀工。江戸時代の刀剣書の多くは相州正宗の弟子としているが,正宗より時代の古い正和3(1314)年銘の短刀があり,今日では『喜阿弥銘尽』に記すように新藤五国光の弟子とみられている。新藤五国光によって創始された鍛え,刃文の沸が強い,いわゆる相州伝の作風は正宗によって完成をみたが,その地刃の沸の強さをより強調したのが則重である。太刀の在銘作はわずか2点に過ぎないが,短刀は多く,先鋭感のある独特の作り込みで,板目が肌立って,地景と呼ばれる硬度の異なる肌目が表れ,また刃文は互の目に丁字が交じり,沸が強く付くのが特徴である。
(原田一敏)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報