前期旧石器時代(読み)ぜんききゅうせっきじだい(その他表記)Lower Paleolithic Period

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「前期旧石器時代」の意味・わかりやすい解説

前期旧石器時代
ぜんききゅうせっきじだい
Lower Paleolithic Period

考古学における年代区分の一つ。旧石器時代の年代区分については,前,中,後の 3期に区分する方法と,前,後の 2期に区分する方法の 2とおりが行なわれている。フランスやイギリスなどにおける文化区分に従えば,アブビル,アシュールの文化期が前期,ムスティエ期が中期,オーリニャック,ソリュートレ,マドレーヌの各期が後期になる。2期区分では,アブビルからムスティエ期までを前期,以後を後期としている。しかし,このような区分は世界各地にそのままあてはまるものではなく,地域によって異同がある。アルプス地方の氷期区分に基づけば,ウルム氷期(最終氷期)の I~II亜氷期を境にして,以前を前期・中期旧石器時代,もしくは一括して前期旧石器時代ということになる。今日では通常,更新世前期から中期にあたる時期の文化を前期旧石器時代,更新世後期のものを中・後期旧石器時代とする。近年,日本では一部の研究者によって,放射性炭素の測定年代によって,3万年前を前期旧石器時代とすることが提唱されている。またこの時代に関しては,アメリカ合衆国のハラム・レオナード・ムビアスが提唱した「アフラシア大陸東西二分説」がある。この説によると,東には礫器,剥片系の石器群が,西には握斧系の石器群があるとされる。(→後期旧石器時代中期旧石器時代

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の前期旧石器時代の言及

【旧石器時代】より

…200万年以上にわたった旧石器時代は,その文化および人類の違いにより,前期,中期,後期の3期に区分される(図)。
【ヨーロッパ,アフリカ】

[前期旧石器時代]
 約300万~200万年前から約8万年前までの長期間続き,初めは猿人(アウストラロピテクス)が,そして後半には原人(ホモ・エレクトゥス)が主人公として活躍した。200万年前よりさらに古い人類およびその文化についてはまだ十分な調査と研究がなされていないが,エチオピアのハダールやトゥルカナ湖に流入するオモ川流域のシュングラなどからは,270万年から240万年前と推定される石器が発見されている。…

※「前期旧石器時代」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android