副交感神経興奮薬(読み)ふくこうかんしんけいこうふんやく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「副交感神経興奮薬」の意味・わかりやすい解説

副交感神経興奮薬
ふくこうかんしんけいこうふんやく

副交感神経興奮剤。コリン作用薬あるいはコリン作動薬ともいう。副交感神経節および節前・節後線維はすべてアセチルコリンによって作動している。したがって、副交感神経を刺激させる薬物としてはアセチルコリンがあげられるが、アセチルコリンと類似の作用をもつ薬物(合成コリンエステル類)およびアルカロイド類、アセチルコリンを分解するコリンエステラーゼを阻害する薬物も同じ作用を示す。すなわち、アセチルコリン、メタコリン、塩化ベタネコール、塩化カルプロニウム、ナパジシル酸アクラトニウム、塩酸ピロカルピン、サリチル酸フィゾスチグミン、ネオスチグミン、塩化アンベノニウム、塩化エドロホニウム、臭化水素酸ガランタミン、臭化ジスチグミン、塩化ピリドスチグミンなどがある。

 副交感神経興奮剤は、一般的に胃アトニーなど副交感神経緊張の低下した消化器疾患に対してアセチルコリン、ベタネコール、カルプロニウム、アクラトニウムが用いられ、ピロカルピンは縮瞳(しゅくどう)薬として、また緑内障の治療薬として点眼で用いられ、ネオスチグミンは腸管の蠕動(ぜんどう)をよくするほか、筋無力症の治療にも用いられる。アンベノニウム、エドロホニウム、ジスチグミン、ピリドスチグミンはいずれも重症筋無力症の治療薬として用いられる。

[幸保文治]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の副交感神経興奮薬の言及

【自律神経薬】より

…自律神経(自律神経系)や自律神経の支配を受けている器官(効果器官)に働きかけて,自律神経が興奮したとき,あるいはその興奮が遮断されたときにみられる効果を発現する薬物の総称。交感神経興奮薬,交感神経遮断薬,副交感神経興奮薬,副交感神経遮断薬,自律神経節興奮薬,自律神経節遮断薬などが含まれる。
[交感神経興奮薬sympathomimetic agent]
 交感神経の興奮は,興奮によって神経の終末から放出されるノルアドレナリン(ノルエピネフリン)が,効果器細胞上のアドレナリン作動性受容体と結合することによって伝達される。…

※「副交感神経興奮薬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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