ピロカルピン

化学辞典 第2版 「ピロカルピン」の解説

ピロカルピン
ピロカルピン
pilocarpine

C11H16N2O2(208.26).南アメリカ産ミカン科ヤボランジ(主としてPilocarpus microphyllus)の葉に含まれる主アルカロイドイミダゾール骨格をもつ数少ないものの一つ.白色の針状晶.融点34 ℃,沸点260 ℃(666 Pa).+106°(水).瞳孔縮小作用がある.塩酸塩(塩酸ピロカルピン)は白色の潮解性結晶.融点205 ℃.+91°(水).アトロピン反対の副交感神経作用をもち,緑内障治療に用いられる.LD50 119~151 mg/kg(マウス経口).[CAS 92-13-7][CAS 54-71-7:塩酸塩]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ピロカルピン」の意味・わかりやすい解説

ピロカルピン
ぴろかるぴん
pilocarpine

中央・南アメリカ原産のPilocarpus jaborandiの葉から抽出されたアルカロイドで、その塩酸塩(塩酸ピロカルピン)が医薬品として用いられる。副交感神経作用薬で、縮瞳(しゅくどう)、唾液(だえき)分泌亢進(こうしん)、発汗、消化液分泌亢進、気管支分泌増大、消化管運動亢進、子宮・膀胱(ぼうこう)・胆管・気管支筋の収縮をおこす。アトロピンと拮抗(きっこう)する。塩酸ピロカルピンは無色の結晶または白色の粉末無臭、味はわずかに苦い。毒薬で、製剤劇薬。点眼液および眼軟膏(なんこう)として診断または治療のための縮瞳を目的とし、眼圧を低下させるので緑内障の治療に用いる。

[幸保文治]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ピロカルピン」の意味・わかりやすい解説

ピロカルピン
pilocarpine

C11H16N2O2ブラジルに自生するミカン科の低木ヤボランジ Pilocarpus jaborandiはじめ数種の葉に含まれるアルカロイド。油状または結晶。水,アルコールクロロホルムに可溶,エーテル,ベンゼンには難溶。普通,塩酸塩として唾液分泌促進,発汗,瞳孔縮小などの目的に用いる。またアトロピン中毒の解毒にも使う。

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世界大百科事典(旧版)内のピロカルピンの言及

【自律神経薬】より


[副交感神経興奮薬parasympathomimetic agent]
 副交感神経終末から興奮伝達物質として放出されるアセチルコリンが結合して効果器に興奮を伝達する部位,すなわち,アセチルコリン受容体のうちでもムスカリン様受容体と呼ばれるものを興奮させて,副交感神経興奮と同様の効果を発現する薬物をいう。この種の薬物は,アセチルコリン,ムスカリン,ピロカルピン,メタコリンなどのように直接受容体に作用するものと,神経終末から放出されたアセチルコリンを分解する酵素であるコリンエステラーゼを阻害して,アセチルコリンの蓄積をもたらすもの(抗コリンエステラーゼ薬)とに大別される。抗コリンエステラーゼ薬としては,フィゾスチグミン,ネオスチグミンなどがある。…

※「ピロカルピン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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