割矧造(読み)わりはぎづくり

日本大百科全書(ニッポニカ) 「割矧造」の意味・わかりやすい解説

割矧造
わりはぎづくり

木彫の造像技法一種。一木(いちぼく)からある程度彫り出した像に鑿(のみ)を入れて前後または左右に木目に沿って割り、寄木(よせぎ)造と同程度の内刳(うちぐり)を施してからふたたびこれを矧ぎ合わせて仕上げをした像で、単なる一木造よりずっと大きな内刳ができるし、芯(しん)も除け、重量も軽くなる。それがさらに進んで、11世紀以降になると、首の周りにも鑿を入れて頭・体を割り離すようになり(これを割首という)、工作がさらに容易になった。小像では一材から割り矧ぐほうが寄木造より簡単で同様の効果が得られるので、寄木造の発達した平安後期や鎌倉時代でも愛用された。この技法は福島県勝常寺の薬師如来(やくしにょらい)像にみられるように、早く9世紀ごろから用いられ、後の寄木造成立の基盤となったと考えられる。

 現在ではこのことばはあまり用いられず、割矧造の像でも一般には寄木造として認識されていることが多い。

[佐藤昭夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の割矧造の言及

【一木造】より

…11世紀に寄木造の技法が完成するまで,日本の木彫の大部分は一木造である。その際,像の干割れを防ぐため内刳(うちぐり)をすることがあるが,これをさらに効果的にするため製作途中で像を前後に割り放し,大きく内刳をしてそれを再び矧ぎ付ける技法を割矧造(わりはぎづくり)という。11世紀以後も等身程度までの像には割矧の方法を用いたものが多い。…

【木彫】より

…頭体,両脚部には各部に通じる大きな内刳りが施され,材の肉は均一に薄くなっている。また同寺の雲中供養菩薩像(像高40~87cm)では,頭体幹部を1材で作り,これを縦に割り放って内刳りを施し,さらに頭部と体部を割り放し,これらを再び矧ぎ合わせるという割矧造(わりはぎづくり)の完成技法が見られる。割矧造はそれ以後,等身大程度までの像を作るときの基本的な造像技法となった。…

※「割矧造」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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