勝宗十句義論 (しょうしゅうじっくぎろん)
慧月(えがつ)作の,インドのバイシェーシカ学派の綱要書。玄奘による漢訳のみが現存し,サンスクリット原典は伝わっていない。6世紀のものと推定されるが,同時期のバイシェーシカ学派の普通の説とはかなり違う。ふつうは,実体,性質,運動,普遍,特殊,内属の6原理(句義)を立てるが,この書は,普遍かつ特殊,原因の力能,無力能,無の四つを加えて10原理を立てる。この書は仏教の論書ではないが,大蔵経に収められ,日本では江戸時代の学僧たちによって,いくつかの注釈書が著された。
執筆者:宮元 啓一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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勝宗十句義論
しょうしゅうじっくぎろん
インド哲学、バイシェーシカ学派の綱要書(6世紀?)。慧月(えがつ)作。玄奘(げんじょう)による漢訳のみが伝えられている。実体、性質、運動、普遍、特殊、内属の6原理(六句義)をたてる通常の同学派の説とは異なり、普遍かつ特殊、原因の力能、無力能、無の四つを加えて10原理をたてている。10原理をたてるのは、この書だけのものである。仏教の論書ではないが、大蔵経に収められており、わが国では、江戸時代に盛んに研究され、いくつもの注釈書が著された。
[宮元啓一]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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世界大百科事典(旧版)内の勝宗十句義論の言及
【宇井伯寿】より
…豊富な文献的知識をもとに緻密で周到な文献学的考証を行うその学風は,日本のインド学・仏教学界に絶大な勢力を築いた。主著に《印度哲学研究》6巻(1926),《印度哲学史》(1932),《禅宗史研究》(1939),《摂大乗論研究》(1935),《仏教汎論》(1947‐48)のほか,《The Vaiśeṣika Philosophy》(《勝宗十句義論》の英訳,1917)等がある。【丸井 浩】。…
※「勝宗十句義論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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